2015-07-12 16:23 by 仁伯爵

平面のプリントと立体のプリント

一般家庭に広く普及している紙を出力するプリンターでは、みんないったい何を出力しているだろうか。Webで見つけたお店のクーポンや地図、ワープロや表計算、プレゼンスライドなどオフィス系ソフトで作成した文書、お絵かき系のソフトで書いた絵、カメラで撮影した写真などだろう。日常的に使用する範囲において、紙のプリンターで出力できる平面のコンテンツは広く誰でも作製できるような環境が整っているように思う。
対して3Dプリンターの状況はどうか。プロトタイプ作成や、立体の創作活動を目的としない一般家庭で3Dプリンターを購入したら、まずThingiverseモデラボなど、プリント可能な形の3Dデータを配布しているサイトで自分の求めるものを探してプリントすることになるだろう。そのうち、出来合いのデータを自分の状況に合わせて手を加えたいと言う欲求が必ず発生し、無料で使用できるモデリングソフトや3DCADソフトに手を出すことになる。そこからさらに複雑なものを作ろうとすると、商用ソフトの購入へとたどり着く。3Dスキャナを使って3Dデータを手に入れようとしても、スキャンしたデータは手直ししなければ使えず、その手直しには高度な編集技術が要求され、やはり商用ソフト購入の動機へとつながっていく。

平面と立体のプリンター

Thingiverseモデラボなどのデータ配布サイトのデータを出力するのは、紙のプリンターで例えるならWebで見つけたお店のクーポンや地図を印刷するのに似ている。とするならば、3Dスキャナーで取り込んでそのまま出力することを期待するのは、デジカメで撮影した写真をプリンターで印刷するのと同等の機能を期待すると言う事になるだろう。しかし実際は、3Dスキャナーでスキャンするのは、平面で例えると平面スキャナーで文書をスキャンするようなもので、スキャンされたものとスキャン後のデータでは品質に大きな差が出る。現時点(2015年7月)で発売されているコンシューマー向け3Dスキャナのスキャンデータによる3Dプリントは、デジカメによる撮影と印刷の関係には追い付いていない。我々消費者が欲しているのは3Dスキャナーではなく、高精度3Dデジカメなのである。カメラと同じ規模の機械でレンズを向けた範囲全てにCTスキャンのような制度で3D形状を測定し保存すると言う事ができればそれこそが際限なく欲しがる無責任な消費者たる我々が真に求めるニーズだ。

立体のアイデアをPCの中に閉じ込める

とはいえ、今はまだそんな高精度3Dデジカメを作る技術が出てきたという話は聞かない。これから開発されたとしても、3Dプリンターのように特許が切れて一般市民の手に届くまでには何年かかるかわからない。もしかしたら危険だと言う理由で広く普及させることが法で禁じられるかもしれない。3Dデータの獲得に3Dスキャンがあてにならず、出来合いの3Dデータに満足できないならばやはり自分で3Dデータを作る手段の獲得が必要である。3Dデータが自分で作れると何がうれしいのか、それは3Dプリンターで使えることがうれしいのだ。CNC切削機で使えることがうれしいのだ。今まで熟練の技が無ければ作れなかった複雑な形状さえ、3Dデータが用意できれば機械に作らせることができる。3DプリンタやCNC機器による造形はコンピューターの中の3Dデータを現実世界へと取り出す機械であるが、3Dデータを作ると言う行為は自分の頭の中にある形状をコンピューターの中にコピーして閉じ込めておくと言う行いである。

3Dデータと作成ソフト

そこで登場するのが、今回のタイトルにもあるRhinocerosだ。なぜRhinocerosか。はじめは無料で利用できるDesignSpark mechanicalを使っていた。とても精度が高くモデリングできるので3Dプリンターの保守パーツなどを作るのにはとても重宝したが、かくかくしたものではなく、もっと曲面をつかった有機的なデザインができないかと考えるようになり、無料の3DCGモデリングソフトBlenderにたどり着いた。このソフトは3DCGのモデルを作成するためのソフトなので曲面をふんだんに用いたモデリングが可能である。しかしCADではないので寸法にはあまり頓着が無い。そして最終的に、Rhinocerosの登場というわけなのだ。Rhinocerosは曲面が自由に使えて、寸法誤差もある程度抑えることができる。そして対応しているファイル形式がとても多いのだ。Webで求めていた3Dデータを見つけたが自分の環境で扱えない形式で悲しい思いをするという事が少ない。とても高価なソフトウェアではあるが、人気も実績もあるソフトウェアなのでいきなりサポートが打ち切られたりする心配は要らなそうだし、習得した操作方法もノウハウとして長く生かすことができそうだ。このRhinocerosを使って3Dプリンター出力用のSTLデータを作った話をかこうと思って居たのだが、長くなりすぎた前置きを一つの記事として切り離し、本題は次回に譲ることにしたい。ごめりんこ。

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