2015-05-29 9:00 by 仁伯爵

Replicator2XLittleRPのモータードライバーを、音が静かになると評判のTMC2100

前回Kickstarterで出資した光硬化式3DプリンターLittleRPのモータードライバーを、音が静かになると評判のTMC2100に換装する作業を行い、見事静音化に成功した。今回は、MakerBot社の第4世代熱融解積層方式の3DプリンターReplicator2Xのモータードライバーも同じくTMC2100に換装してしまおうと思う。MakerBot社の3Dプリンターは現在第5世代へと進んでいるが、デュアルヘッドの機体がなかったり、PLA専用でABSが使えないものばかりだったりと、第4世代のReplicator2Xを超えるスペックの物が用意できていないのが現状だ。Stratasys社に買収されてからのMakerBot社はぱっとしない。そのため、旧世代機のはずのReplicator2Xがいまだに生産終了とならずにラインナップの最後に名を連ね続けている。Replicator2XはZortraxなどの最新機種の造形品質に比べて見劣りしてしまうことは確かだが、間違いなく名機である。そんなReplicator2Xは元はと言えばReprapの3Dプリンターから派生したものなので、ノズルなど互換性があるパーツも多い。Reprapな3Dプリンターで使用した際の情報を公開してくださっている方々のウェブサイトを参考にさせていただいた。

前回と同じくモータードライバーを、ITショップ「えとせとら」さんで購入した音が静かになると評判のTMC2100へと換装してみよう!

Replicator2Xサウザーの共通点

はんだ付けに関して前回との違いは後述するが、やることはおおむね同じである。今回はさすがにReplicator2Xのメインボードであるmighty boardのうえではんだ付けするわけにも行かないので、テスト用のブレッドボードにピンを刺して、その上ではんだ付けしてみた。

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そして、Replicator2Xをひっくり返して底面のネジを外す。

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底面のカバーを取り外したら、mighty boardとご対面だ。5つのモータードライバーが取り付けられているのが見える。X軸、Y軸、Z軸と、右エクストルーダー、左エクストルーダーの計5つのモーターを制御するためだ。下の2つがエクストルーダー用、上の3つがX軸、Y軸、Z軸用である。エクストルーダーの音はさほど気にならないので今回は対象外とする。Z軸も大幅動いて大きな音を立てるのは造形の開始前と造形終了後だけなのでこれも対象外にする。今回、モータードライバーを交換するのはX軸とY軸だけとなる。

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角度を変えてみると、基盤に大きなX、Y、Zと文字が印刷されているので、取り替えるべきモータードライバーは一目瞭然だ。奥の二つを取り替える。

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しかしここで、Replicator2Xの重大な秘密に気づいてしまう。取り付けられていたモータードライバーとTMC2100の拡大画像をご覧いただきたい。

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さすがに工業製品のはんだ付けは綺麗で、吾輩がはんだ付けしたTMC2100の方がイモはんだっぽいね、と言う事が言いたいのではない。印刷された白い文字に注目すると、位置が逆なのだ。LittleRPに取り付けた時とは裏返しにはんだ付けしなければいけなかった。はんだを溶かしてピンを取り外し、付け直すという道もあったかもしれないが、全部のピンのはんだを同時に加熱して、基板上のチップに損傷を与えずに取り外すのはハードルが高い。1つはLittleRPのTilt Kit用に使い、もう一つはLittleRPの予備部品としてストックしておくことにして、2つ追加注文した。痛い出費であるが乗り掛かった舟だ。結果を見ずに引き返すわけにはいかない。気を取り直してひっくり返してはんだ付けした様子がこちら。

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裏側と違ってチップや細かい部品がひしめいているので、巻き込んだり、はんだごてを当てて焦がしたりしないよう注意する必要があり、若干難易度が上がった感じがするが前に3つもはんだ付けして慣れてきた。慣れてきたころに事故が起こりやすいので気を付けて慎重にはんだ付けた。

本体への取り付けと電流の調整

TMC2100の売りである静音化機能StealthChopを使うためには、CFG1とCFG2のピンをオープンにする必要があるが、Replicator2Xmighty boardにはジャンパーピンやスイッチで切り替えるような仕組みは搭載されていなさそうなので、先人たちに倣ってCFG1とCFG2のピンをニッパーで切り落としてみる。下の写真の手前側が切り落とす前、奥が切り落とした後の姿である。切り落とすピンを間違えると悲しいので、慎重に確認して切る。

TMC2100_030

印刷されたピンの説明が見えなくなってしまったのでピンの向きに注意してmighty boardに取り付ける。この向きが上下逆だと、TMC2100が損傷してしまう。実際、それでひとつ損傷させてしまった。勿体ないオバケが出そうだが、mighty boardが損傷しなくて本当に良かった。冷や汗ものである。正しい向きに取り付けた様子が下の写真だ。この状態で電源を入れ、赤丸の入ったところに、テスターの+と-の端子をあててVrefピンの電圧を測り、脱調が起きない状態を探り探り調整していく。今回は回す調節ネジが裏側になってしまっているので、調節するときには電源を落としてから取り外してネジを回して調整し、取り付けて電源を入れて測定する、というサイクルを繰り返す必要がある。めんどくさいが仕方ない。

TMC2100_029

だがその前に、やはりモーターの回転方向の設定を行う必要があった。

モーターの回転方向の反転

LittleRPTMC2100を取り付けたときには起こらなかったが、やはり事前情報の通りReprapの流れをくむReplicator2Xにおいては、モータードライバーをTMC2100に取り換えたら、Reprapに取り付けたときと同じようにモーターの回転が逆になり、エクストルーダーを載せたヘッドが意図した方向とは逆に動く症状が現れた。モーターに送られるパルスが逆転すればいいので、モーターにつながったケーブルを180度反転させて接続すれば解決するらしいのだが、Replicator2Xで使われている端子は逆に刺さるのを防止するでっぱりがあり、逆にさすことができない。ここはファームウェアの設定でモーターの動きを反転させた方がいいだろう。モーターへの接続端子は物理的に削ってしまうと元には戻らないが、ファームウェアの設定変更ならいつでも元の状態に戻せる。Replicator2Xの電源を入れて、Replicator2Xの制御ソフトウェアであるMakerbot Desktopを起動したPCへUSBケーブルで接続し、Makerbot Desktopの上のメニューから、”Devices”→”Device Preferences”を選択する。

TMC2100_001

Onbord Preferenceのウィンドウから、”Axis Inversion”の欄の、XとYのチェックを元の状態から逆の状態に設定する。今回はチェックが入っていたので、二つともはずしておいた。ここは変更前の状態がチェックなしの場合もあるらしい。その場合はチェックを入れる。どちらの場合も、元の状態と逆にしておけばいいと言う事だ。チェックが終わったら、下の”Write Changes”をクリックしてからMakerbot Desktopを終了させる。

TMC2100_002

この状態で、操作する前に一度、本体の電源を落として入れなおす。この再起動を行う前に本体の”Utilities”→”Jog mode”などでX軸とY軸の動きを確認しようとすると、設定が変更前に戻ってしまう。設定変更したらすぐに再起動する。その後、”Job mode”から動きが設定通りになったことを確認すればよい。

再びのVrefピンの電圧の調整

まずVrefピンの電圧が1Vのデフォルト状態で”Jog mode”をつかってヘッドをX軸やY軸へいろいろ動かしてみたところ、動いては止まり、というような不安定さでものすごく脱調した。今回もまたそこから電圧を下げていった。0.8Vまで下げて”Jog mode”でX軸やY軸へいろいろ動かしてみたところ、長く動かすとコツコツと不気味な音が鳴る。0.6Vあたりまで下げたところで音が治まり、良い感じに見えたのでテストプリントしてみたところ、脱調して途中から造形物がX軸は向かって左側に、Y軸は正面から奥の方向にずれてしまっていた。最終的には、0.5Vで安定している。

TMC2100への換装を終えて

無事に手元にある2台の3Dプリンターの静音化に成功した。モーターの音は本当に静かになった。いままであの音は色んな所の摩擦音だと思っていたが、騒音のほとんどはモーターの電磁ひずみによるものだったのだとわかって、とても新鮮な気分になった。しかし、いざ静かにしてしまうと、いかにもコンピューターというようなあの音が懐かしく思えてくる。あのヘッドが円を描くときのピロピロという音は、一昔前のSFでの効果音そのものであり、ただの騒音というのがはばかられるほど愛嬌があった。そんな感情もないものねだりなのかもしれない。ともあれ、機械の駆動音が静かであるというのはいいことだ。とても静かになっている。造形の品質にはあまり影響はないようだ。むしろ、これから夏場に長時間の出力を行った際の発熱による脱調が心配だ。この状態でしばらくは様子を見つつ運用していきたいと思う。運用していくにしたがって安定稼働させることができるような知恵もたまっていくだろう。TMC2100のおかげで静かな夜が過ごせそうだ。善き哉、善き哉。

 

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