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3Dプリンター
2014-04-11 17:11 by 仁伯爵

約束された来るべき試練の到来

前回、アームとビルドプレートをアップグレードしてご機嫌な我が3Dプリンターであったが、ついにあらかじめ運命により約束された試練が訪れた。エラーがディスプレイに表示され、造形が不可能な状態に陥ってしまったのだ。エラーメッセージは以下の通り。

Tool 1 Failure!
Not heating properly
Check wiring.

ツール1というのは、左側のエクストルーダーのことだ。これが温められていないので、接続を確認してくれ、というエラーメッセージだ。言われた通りにヒーターの接続を確認してみることにする。エラーメッセージ通りならどこかが断線しているはずだ。

焦げたケーブルとの遭遇と患部摘出

エクストルーダーの上に伸びるケーブルを束ねた黒い絶縁布で巻かれたケーブルたちをひん剥いてみると、なんと、その中に一つ焦げたソケットがあるのを見つけた。

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このケーブルの先にあるのは、メッセージの通りカートリッジヒーターであった。ヒーター本体に問題があるのだろうか。ヒーター本体が破損しているとすると、ホットエンドの部品に損傷を与えている可能性も考えられる。症状を確認するため患部摘出を試みる。

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上の写真はホットエンド部を下から覗き込んだ写真だ。赤丸のイモネジを緩めると、カートリッジヒーターを引き抜くことができるようになる。青い丸で囲んだネジを外すと、ホットエンドを支えるアルミの分厚い台座がごっそりと外れる。写真には写っていないが、アルミの台座の後ろ側にあるイモネジを外すと、台座からホットエンドを取り外すことができるようになる。さらに、ホットエンドの絶縁セラミックで囲われた上部にネジで止められているのが温度センサーである。これらを一つ一つ慎重に取り外していくと、ホットエンドを摘出することができるのである。
ここで注意しなければならないのは、ホットエンドをかこっているセラミックはとても脆いということだ。先人たちの情報からこれが脆いということは理解していたつもりだったが、摘出の過程で見事に割ってしまった。それはもう粉々に。あんなにすぐ割れるとは。皆さまも注意していただきたい。あのセラミックは、事前に想像する以上に脆い。

摘出したホットエンドの分解と確認

摘出したホットエンドは、さらに3つに分解することができる。上部ノズルと、セラミックでおおわれたアルミブロック部分、そして、先端ノズルである。これらは加熱と放熱を繰り返すうちにとってもかたく締め付けられており、外すにはバーナーやコンロで加熱してやる必要がある。その過程は以下の記事を参考にさせてもらった。

ノズルの交換~エクストルーダ分解~(レプカス家庭用3Dプリンター・Replicator2xをあれこれする日記)

この記事のコメント欄によると、ノズルを温めずにアルミブロックを熱膨張させて隙間を作ると取りやすい、とのことだった。そのため、先端ノズルを取り外すため、上部ノズルの付け根からアルミブロックを重点的に加熱した後、上部ノズルを抑えて先端ノズルを外そうと六角スパナで回してみたが、上部ノズルがくるっとまわって外れてしまった。その時、先端ノズルは依然として固いままだった。方針を変えて、アルミブロックと先端ノズルの両方をまんべんなく温めてみると、なんともあっさりと先端ノズルを緩めることができた。さっきまでの頑なな態度が嘘のようにくるくると回った。この経験から、先端ノズルを外す場合は、ノズルとアルミブロックの両方をまんべんなくフィラメントが溶け出す程度まで温めると、部品を痛めることなく取り外すことができるだろう。
今回はホットエンドの取り外しの時にすでにセラミックを粉砕してしまっていたので、ホットエンド分解の折には遠慮なくアルミブロックをいじめてしまい傷だらけのローラにしてしまった。次回からはもっとスマートに取り外すことができるだろう。何事も百聞は一見に如かず。一見は一行に如かずなのである。分解した図が下の写真である。

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見事に粉砕されたセラミック、アルミブロック、上下のノズル、カートリッジヒーター、ヒーターを抑えていたイモネジに分解された。これらを見ても、損傷を受けているのはヒーターのコネクター部分だけのようだ。これなら、カードリッジヒーターの交換だけで復活できそうだ。

ヒーターを求める旅路と、makerbot社の神対応

分解したヒーターを凝視すると「24V 40W 1305」という刻印が見つかった。電圧は24Vで電力は40W、1305というのはどうやら型番のようだがどこのメーカーのものかは特定できなかった。太さは6mmほどで長さが3cmで24V、40Wのヒーターを探せばよさそうだ。コネクタ部分はmolex社の43640の2wayである。因みに本体がわの受けは同じくmolex社の43645のコネクターが使われている。
上記の要件を満たすカートリッジヒーターを探して、コネクターをつけかえれば、どうやら修理ができそうだ。だが、ヒーターを付け替えたところで再び焼け焦げては意味がない。ヒーターのコネクターが焼けてしまった今回の現象について、makerbot社の見解を聞いてみようとつたない英語を駆使してサポート窓口に問い合わせてみた。本体のシリアルナンバーとmakerbot社に注文した時の注文番号を入力しサポートフォームから問い合わせを行った。
その結果、コネクターの組み立て(cable assembly)に不具合があったため、接触が不十分になってしまっていたところに電流を流し続けた結果、発熱し焦げてしまったのだろうという見解であった。ホースに例えるなら、細くなってしまっているホースにいつも通りの水圧をかけたら耐え切れずに破裂した、というような事だ。
さらに、なんとヒーターの不具合なので無償でヒーターと、左側のホットエンドを丸ごと送ってくれるという。なんと男前な対応だろう。メールのやり取りから1日後にFedexで発送され、その次の日にはトラックナンバーがメールで送られて、発送から5日ほどで手元に届いた。makerbotからの荷物には、ホットエンドと、マイティーボードからのケーブルも含まれていた。これほどスムーズに対応してもらえるとは思っていなかった。素晴らしい。今までつくりが甘いとかいろいろ言ってごめんなさい。サポートセンターと名のつくものに問い合わせて不快にならなかったばかりか、これほど気持ちよく対応してもらえたということは久しく記憶にない。

ホットエンドの帰還

makerbot社から送ってもらったヒーターを使って、分解したホットエンドを組み立ててみる。アルミブロックには先端ノズルを先に取り付け、次に上部ノズルを取り付ける。先端ノズルと上部ノズルは同じM6サイズのネジ穴を共有しており、上部ノズルにはストッパーとなるものがないのでどこまでも入っていけてしまう。そのため、先に上部ノズルを付けると、ネジ穴を長く使いすぎてしまい、先端ノズルが最後まで入らず隙間が空いてしまう状況が起こりうる。先端ノズルを先に付けるとそのようなことは考えずに済むのだ。
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続いて、割ってしまったセラミックを接着剤でつけてみる。ホットエンドは高温とはいえ230℃程度なので接着剤でも大丈夫だろう。しばらく使ってだめなら耐熱用の接着剤を買おうと思う。説明書には絶縁セラミックという記述があるので、おそらくこのセラミックは温度センサーが正しく温度を測るために高温でも耐えうる絶縁体としてアルミを覆っているのだと思われる。要するに絶縁できればいいので継ぎ接ぎだとて、さほど神経質になる必要もないだろう。

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焦げたヒーターと、本体側配線の修復

カートリッジヒーターが焦げたのは、ケーブルのコネクターの圧着不良によるものだということが分かった。ヒーター本体には損傷は見られず、コネクターの取り換えだけで復活できそうだ。ならば捨ててしまうのはもったいない気がした。新品のヒーターは取っておいて、修復したヒーターを使うのが良いのではないか。念のため、本体側のコネクターも今回のおこげで接触不良を起こして再燃焼してもこまるので取り替えてみれば、それだけで修理完了となるのではないだろうか。
コネクターには、カートリッジヒーター側のコネクターは、molex社の43640-020143031の金具が使われており、本体側のコネクターには、同じく43645-020043030が使われている。現在あるコネクターをカットし、これらに付け替えていく。makerbot社から送ってもらった新品のヒーターは、損傷したヒーターよりケーブルが短い。なので、損傷したヒーターのコネクターをカットして付け替えてケーブルが短くなっても、送ってもらったヒーターのケーブル長よりも長い状態をキープできたので、多少のカットは問題なかろう。まず、コネクター部分をニッパーでカットしてしまう。
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続いて、ケーブルの先端の3mm程度の皮をむく。
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そして、43031圧着ペンチを使って圧着する。一番おしりのバレル(包み込むために羽のようになっている部分)でケーブルの被覆部の最後を圧着し、その上のバレルでむき出しの芯線を圧着する。
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二本とも同じ向きをむくように圧着する。装着時にねじれないように。
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これに、43640-0201をカチッと感触があるまで差し込んで装着すれば、カードリッジヒーター側は完成である。
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つづいて、本体側のコネクターだが、損傷がなければこのまま使おうかとも思ったが、ちょっと変色してるっぽかったので大事をとって交換してしまうことにした。
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勇気をもってバッサリとカットしてしまう。カットの前に感電しないように本体の電源が切れていることを確認しておくのを忘れないようにする。
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そして芯線を傷付けないように慎重に皮をむく。
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カードリッジヒーターと同じ要領で、43030を圧着する。
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これに、カチッという感触があるまでく43645-0200をはめ込めば完成である。
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テストヒーティングと、最終的なくみ上げによる修理の完了

いよいよ最終段階の組み立て工程だ。ホットエンドを組み込んでカードリッジヒーターを取り付け結線!ピンク色のLEDがカトちゃんのちょっとだけよを思い起こさせる艶めかしさだ。
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この状態でホットエンドの今回取り替えた左側のホットエンドだけプレヒートを行ってみる。
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順調に温度があがりつづけ、230度まで加熱できることを確認した。温度センサーもちゃんと温度を拾っているようだ。この時に、今回付け替えたコネクター部分が接触不良で加熱していないかどうかも確かめたが、常温であった。最後に、取り外してあったエクストルーダー部分を組み立てて、修理完了である。気になってた絶縁カバーのささくれも、これを機にカットしてしまった。結束バンドで止めていた部分も、マジックテープに置き換えた。すると見た目がだいぶすっきりした。次回からのメンテナンス性も高まっただろう。
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今回もだいぶ長い記事になってしまった。最後まで読んでくださった皆様には心から御礼申し上げたい。これで故障から回復することができた。また、快適な3Dプリンターライフに復帰できる。今度こそ、次回はバショウカジキファームウェアにアップグレードした顛末を記事にしようともう。

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