2016-01-11 22:14 by 仁伯爵

3Dプリンターのビルドプレートを巡る旅

思えばここれまで色々とMakerbot社のReplicator2Xを色々といじくってきた。BC technologica lsolutions社のアルミ製ビルドプレートアームと取り外し式ガラスビルドプレートを取り付け、エクストルーダーをバネ式にして、故障したノズルヒーターを取り替えて、ノズルの先端も幾度となく交換した。なかでもガラス製ビルドプレートは造形物を取り出してビルドプレートからはがせるのでとても便利に使っていた。だが、使い込むにつれてやはりこれも改善せねばならないのではないかという点がいくつか出てきた。

まず、ガラス製のビルドプレートは耐熱ガラスとはいえやはり熱には弱いらしく、ビルドプレートの温度を100℃に抑えなければならなかった。Replicator2XでABS樹脂を使って造形する場合、デフォルトの設定値は110℃である。金属製のビルドプレートに比べて温度の上限が制限されると言うのは、これから登場するであろう色んなフィラメントでもっと高い温度を試したいと思った場合、それをすることができないという弱点を抱えてもいる。

さらに、耐熱ガラスは脆い。剛性をもとめて硬質ガラスにすると熱に弱くなる。耐熱性と丈夫さはトレードオフなのだ。ビルドプレートは熱することを前提としているので耐熱ガラスでできているのだが、やはり一つ割ってしまった。BC technologica lsolutions社の購入時に予備のビルドプレートも入手していたのだが、これもいずれ割れるだろうなぁという漠とした不安があった。そのたびにアメリカから取り寄せるのは送料も高いし面倒だ。

そして、耐熱ガラスとはいえ、熱して冷ましてを繰り返しているとどうも曲がってきているのではないかという疑念が払しょくできなかった。ガラスは堅いが液体なので、長い時間をかけて変形していく運命だ。ビルドプレートとノズル先端のレベリングをやっていると、ビルドプレートの中央がもっこり膨らんでいて、両端が極端に垂れ下がっているのが解かる。なので中央部に合わせてレベリングすると、造形可域がとても狭い。ビルドプレートの端の方までとどく造形物は造形中に端からはがれてしまう。広いビルドプレートの中央しか使えないのは何とかせねばなるまい。

一番の問題は、ガラスビルドプレートとヒートベッドの間に隙間があるので結構ガラスブレードに遊びがあり、造形中にズレて南斗水鳥拳をやられた直後の悪者のような造形になってしまうことがしばしばあった。それを防ぐために磁石によって固定するようになっているのだが、ヒートベッドの熱で磁石をくっつけている接着剤がはがれてしまい磁石がすぐにとれてしまう。これは造形失敗に直結する大問題であった。

GeckoTekとの出会いと迷走

これらを一挙に解決するソリューションとして、GeckoTek社の3Dプリンター用のビルドプレートがKickStarterで資金を集めているのを去年見つけた。そして迷う間もなく出資していたのだが、先日それが我が手元に届いた。このプロジェクトは当初は特殊なコーティングをしたビルドプレートでPLAもABSも造形中にはくっ付いて、造形終了後にあっさり離れる魔法のようなビルドプレートを提供するとしていた。デモで見せられていた動画には緑色のプロトタイプだ映っていた。だが開発途中で約束していたスペックを提供できないとして方向転換し、ヒートベッド用のHTプレートとあっためないビルドプレート用のRTプレート、ナイロンフィラメント用のNYプレートの3種類に枝分かれして、仕様が変更された。そして実際に提供されたビルドプレートは緑色ではなく銀色の金属丸出しのビルドプレートであった。Replicator2X用のヒートベッド対応のマグネティックベースも無事に同梱されて届いた。

予定を大幅に遅れて仕様も変わってしまったが、完成品が手元に届いたのはうれしい。聞くところによるとクラウドファウンディングの1割はプロジェクトが完成品を出資者に提供できずに終わるらしい。今のところ私が出資したクラウドファウンディングのプロジェクトはすべて完成品を贈ってくれた。もしかしたらそれはとても運のいいことなのかもしれない。

GeckoTekビルドプレート開封の儀

ではアメリカからはるばる届いたビルドプレートのダンボールをがバッと開いてみる。
GeckoTech001

箱から取り出してみると、金属丸出しの光沢がなかなかカッコいい。
GeckoTech002

マグネティックベースの一部に切れ込みが入っていて、この隙間から磁石でくっ付いているビルドプレートを剥がすことができる。
GeckoTech003

剥がしてみると、マグネティックベースが丸裸になる。
GeckoTech004

マグネティックベースをよく見てみると、あまり綺麗ではない。ところどころでっぱりのようなものがあったので削っておいた。
GeckoTech005

マグネティックベースをひっくり返してみると、台座を取り付けるためのネジ穴が確認できる。ここに別途ヒーターを入手して、純正ビルドプレートから取り外した台座と耐熱シートで挟んでねじ止めするのだ。そう、このパッケージにヒーターは含まれていないのである。
GeckoTech008

ビルドプレートを並べてみた。左下が加熱用にも耐えるHTプレートで、右上がナイロンフィラメント用のNYプレートである。常温プレート用のRTプレートは、HTプレートが常温でPLAを出力するときにも使えるとのことなので今回は入手していない。
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表面は綺麗だが、裏は手形やシミがべとべとついていて、スタートアップ企業ならではの手作り感がここからも感じられる。
GeckoTech007

GeckoTekからの荷物はこれですべてだ。GeckoTekの説明動画によると、これらと分解した純正ビルドプレートの部品を組み合わせて取り付けるビルドプレートを完成させて取り付けるらしい。

シリコンヒーターの入手と端子の圧着

上の動画を見たとき、分解した純正のビルドプレートから粘着シールでくっついているシリコンヒーターを割と力づくでひっぺがしているのが解かるだろう。これはちょっと乱暴だなあと感じた。もっとスマートにいかないものかと。そこでebayで検索してみたところ、なんとKeenovoという中国の業者がReplicator2Xのヒートベッド用のシリコンヒーターを売っているではないか。ホントebayは世界中の人が思い思いの物を出品しているのでびっくりするほど何でも売っている。さっそく注文してみたら、注文から2週間ほどで品物が届いた。横に写っているのはおまけのスモールギフトだそうである。作業場のスチールラックに飾ってみたところおしゃれでなかなか良い。殺伐とした作業場が華やいだ。片面には3Mの粘着シールが一面に張られている。これでGeckoTekのアルミ製のヒートベッドに張り付ければよい。純正のヒーターをべりべり剥がすよりはいくらかスマートである。
GeckoTech009

裏からはコードが4本飛び出ているのが解かる。24V、130Wは純正のヒーターと同じである。
GeckoTech010

出ている4本のケーブルのうち、赤の2本が温度センサーとなる電熱対で、白い2本のケーブルがヒーターの電源ケーブルである。極性は無くプラスマイナスはどちらでも良い。
GeckoTech011

ここに付ける端子は、Molex社の基板用コネクタハウジング オス 4極 1列 4.2mm 39-01-4046Molex コネクタ端子 (圧着端子) オス 39-00-0048を格納すればぴったりはまる。
GeckoTech012

圧着工具でしっかりと端子を圧着する。
GeckoTech013

4本とも金具を圧着!
GeckoTech014

下の写真のケーブルが、Replicator2Xの制御ボードであるMightyBoard rev.h に取り付けられているヒートベッド用のハーネスである。BC technologica lsolutions社のヒートベッドは直接MightyBoardに取り付けるようになっていたので取り外してある。今回はこれを戻して、純正のビルドプレートと同様に直接MightyBoardを触らなくても取り外せるようにしたい。よってこれの大きい方の端子に、今回圧着した端子をつなぐ。
GeckoTech015

圧着端子をハウジングに収める前に端子の並びを確認してみる。赤と黒がヒーターの電源なので、白いケーブルをつなぐ。白と緑が温度センサーなので赤いケーブルをつなぐ。戸の並びになるようにハウジングに収めるのだが、本体でテストしてからハウジングに収めることにしたい。圧着端子の引き抜き工具があれば一度修めた圧着端子を引き抜くことができるのだが、無いので確認を取ってからハウジングに収める。今はこのままにしておく。
GeckoTech016

これでヒーターの準備は整った。次はいよいよ組み立ててみよう。

GeckoTekマグネティックベースの組み立て

マグネティックベースを組み立てるには、純正のビルドプレートの部品が必要だ。BC technologica lsolutions社のビルドプレートに取り換えて以来、スペアパーツとして保存されていた純正のビルドプレートを引っ張り出してきた。
GeckoTech017

これをひっくり返して裏側のボルトを外す。よく見ると止めるべきボルトは4本なのに、3本しか留められていない。今まで気づかなかった。今まで気づかなかったが、今となってはどうでもいいことである。
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ボルトを外してふたを開けると、白い断熱材が見える。
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断熱材を取り除くと、赤いシリコンヒーターが見える。今回購入したヒーターと同じ24V、130Wである。ヒーターが貼りついてるビルドプレートは使わないのでスペアパーツとして大事にしまっておこう。
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次は、Keenovo社のシリコンヒーターをGeckoTek社のマグネティックベースに張り付ける。ビルドプレートを剥がす切れ込みが手前に来るように、ケーブルは切れ込みとは反対方向に出ていることを確認して張り付ける。
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ヒーターがネジ穴をふさがないように真ん中に綺麗に貼れた。
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ここに先ほど取り外した断熱材を置く。
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さらに、純正ビルドプレートの底を取り付けてネジを4つとも締める。
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しかしこれだとヒーターのケーブルが出ているでっぱりがボコッとして不安定だったので、あとから緩衝材を入れてちょっと調整した。
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これで組み立ては完了なのでいよいよ本体に取り付けてみる。

本体への取り付け

まずは、今ついているBC technologica lsolutions社のヒートベッドを取り外す。ビルドプレートの平衡調節に使う3つのネジを全部緩めて外す。
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本体を横向きにして、4つのネジを外して基盤を覆っているカバーを取り外す。
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BC technologica lsolutions社のヒートベッドの赤と白のケーブルを取り外す。赤いケーブルはコネクターの爪を抑えて引き抜き、白いケーブルはマイナスドライバーで押さえを緩めて引き抜く。
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ケーブルが取り外せたら、ヒートベッドが取り除けるはずだ。これもスペアパーツとしてしまっておこう。この逆の要領で、純正のハーネスを取り付けておく。
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ここで組み立てたヒーターから出ている4本のケーブルがバラバラの状態だと取り回しがしにくいので、ポリエチレンチューブにらせん状に切り込みを入れて、ケーブル纏めチューブを作ってみる。右が切る前のチューブ、左が切り込みを入れたチューブである。
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これをケーブルに巻き付かせれば、ケース内での取り回しが楽になるだろう。引っかかってZ軸の動作を阻害する危険性も低減できる。これを、ビルドプレートの取り付け位置から穴を通して基盤の方にケーブルを貫通させる。
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ケーブルを通せたら、組み立てたヒートベッドの3本の足にバネを通して、本体に取り付ける。
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各ケーブルに極性は関係ないとkeenovo社から聞いてはいたものの、ちょっと心配だったので圧着端子をハウジングに収める前にこの状態で温度が正常に取得でき、ヒートベッドが熱せられるかどうか試してみた。ショートすると大変危険なのでこんな横着はマネしてはいけない。
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ためしにプレヒートしてみるとどうやら、温度が正常に測定できているようだ。順調に加熱もされている。
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電源を落として、圧着端子を今度こそ並びが崩れないようにハウジングに収める!
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そして本体に接続!
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上手にできたので裏蓋を閉めて、
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完成だ!
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マグネットに、ビルドプレートを載せると、カッコいい!!
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これで、カプトンテープよりも造形時にはがれにくく、造形が終わればすんなり剥がれるビルドプレートを手に入れたはずだ!これからはカプトンテープを張る手間から解放されるだろう。さっそく使ってみたのだが、その使用感の詳細については長くなってしまったので次回に詳しく述べることとしたい。

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