ノズル詰まりの恒久的解決に向けた試み
3DプリンターReplicaotr2Xで長時間にわたって造形物を出力していると、エクストルーダーから押し出されるフィラメントが不足して出力に失敗するというトラブルにたびたび見舞われる。考えられる原因は2つ。ノズルが詰まってしまっている可能性と、フィラメントを押し出す力が弱くなってしまっている可能性だ。
そんな時は、フィラメントを送り出す力を取り戻すためにマニュアルに従ってエクストルーダーを分解し、ステッパーモーターについているギアの溝を掃除したり、エクストルーダーの調整ネジを締めてギアとボールベアリングの隙間を狭く調整するといい。
さらに、ノズルが詰まっていると疑われる場合は、下記のブログを参考にして、0.3mm径のピアノ線と0.8mm径のアルミ線を使ってノズル掃除をしてあげていた。これを行うと、ノズルにたまった焦げたフィラメントの除去も行えて造形物に焦げた色が混じるのも軽減できた。
Replicator2Xのメンテナンス ノズルの詰まりとその解消法(仙童工房)
それで一時的に症状は改善されるが、それでも長く使っているとまた、たびたびノズルからフィラメントが出なくなる症状に見舞われることになる。やはり、エクストルーダーがフィラメントをつかむ力が緩んでしまうのがそもそもの問題なのではないのかと考えた。しっかりと押し出されていれば中でフィラメントが焦げたり詰まったりする頻度を下げることができ、恒久的解決となり得るのではないか。
改良エクスクルーダーの存在
世界は広い。この問題はすでに海外のユーザーによって解決されていた。Thingiverseにばねを使ってフィラメントを押し付ける方式の改良エクストルーダーの3Dデータが複数アップロードされていた。その中でも今回は、Replicator 2X Extruder Upgradeを使用させてもらうことにした。
ThingiverseからデータをダウンロードしてMakerWareで読み込んでReplicator2xで出力すればよい。バネで常に力がかかる物なので、インフィル100%で出力してみた。1度目は3DデータのそのままをABS樹脂で出力したら、出力後の収縮で微妙に縮んでしまい、ステッパーモーターにうまくはまらなかった。なのでスケールを101%にちょっとだけ拡大して出力したところ、ぴったりのサイズとなった。ABS樹脂は結構縮むのだ。ちなみにインフィル15%で出力した時は、拡大しなくても大丈夫だった。インフィルを詰めて出力するときのみ、収縮率を考慮に入れて出力する必要があるようだ。
最適なバネを求めて
改良エクストルーダーはABS樹脂だけでは収まらない部品がある。そう、バネやネジ、ボールベアリングが必要なのである。必要なのは以下の三つ。
- 直径3/8インチ x 長さ1-1/8インチ x 太さ0.041インチの圧縮バネ
- 内径3mm x 外径10mm x 幅4mm のボールベアリング(623Z)
- M3 x 10mmのネジ
これらはネットで探せばすぐ見つかる高をくくっていたのだが、実は直径3/8インチ x 長さ1-1/8インチ x 太さ0.041インチの圧縮バネというインチサイズのバネはなかなか見つけることができなかった。日本で売っているバネはミリ単位のものが多かったのだ。ebayで探せば、上記の3点セットが売っていたが、割高なのと到着までに1か月を要した。なので国内で調達できるならその方がいいだろう。バネの寸法をミリに直し、直径約9.525mm x 長さ約28.575mm x 太さ約1.0414mmに近い圧縮バネを探せばよい。その結果、直径10.0mm x 長さ23.0mm x 太さ1.20mm のバネを使うことにした。 長さは約5mmほど短いが、その代わりに太さが約0.16mmほど太いのでちょうどいいだろうというどんぶり勘定で選んだのだが、結果的にそれがちょうどよかった。下の写真の右が、直径3/8インチ x 長さ1-1/8インチ x 太さ0.041インチのバネ、中央が直径10.0mm x 長さ23.0mm x 太さ1.20mm のバネ、左のが、今回はボツとなった直径10.0mm x 長さ23.0mm x 太さ0.80mm のバネである。
結果として、組み立ててみると直径3/8インチ x 長さ1-1/8インチ x 太さ0.041インチのバネはちょっと長すぎるので直径10.0mm x 長さ23.0mm x 太さ1.20mm のバネがちょうどよかった。下の写真の右が、直径10.0mm x 長さ23.0mm x 太さ1.20mm のバネで、左が、直径3/8インチ x 長さ1-1/8インチ x 太さ0.041インチのバネで組み立てた様子である。左のほうが長すぎてたわんでしまっているのが分かると思う。右のほうがしっくりとおさまっている。
こちらの方が少し強いのだが、問題なくフィラメントをつかんで送り出してくれているので強すぎるということはなさそうだ。
エクストルーダーの取り付け
本体のエクストルーダーを分解して、ステッパーモーターとエクストルーダーを取り出し、今回作った改良型に付け替える。左の2つが純正のエクストルーダーで右の二つが今回作った改良型である。
これをモーターに取り付ける。純正のエクストルーダーに取り付ける場合はモーターの本体と軸に取り付けられたギアの距離が9.4mmに調整してあったが、改良型ではこの距離ではちょっと狭すぎてベアリングとうまくかみ合わなかった。そのため、ギアを外側へ少し動かしておく必要がある。改良型を組み立てた状態でモーターにあててみて、ベアリングがギアとかみ合う距離を確かめながら少しづつ調整した。そのようにして組み立てると次のようになる。
あとはこれを本体にくっつけるだけである。外した時の逆の手順で粛々と組み立てるのみだ。
フィラメントをロードするときは、摘みを摘まんで差し込む。アンロードするときも、摘みを摘まんで引き抜く。これでフィラメントを引っ張る力が非常に強くなった。5時間程度の出力で完了するような造形物しか出力してないが、非常に安定しているように感じる。次回はフィラメントクリーナーを設計してみたのでそれを記事にしようと思うが、それが実現するかどうかは、また別のお話である。期待せずに待て!
8 件のコメント!
はじめまして。
ウェブを通りがかりに見つけた者です
自分もreplicator2xを購入していろいろ試していますが、ここまで一つの事を突き詰めて、記事にされていて感動しました。すごいです!
これからも楽しみに記事を読ませていただきます。
レプカスさん、コメントありがとうございます。
おほめに預かり恐縮です。
国内ではまだまだ少ない3Dプリンターユーザー同士、仲良くいたしましょう。
こんにちは、仁伯爵 さん
私は今0.2mmのノズルで造形を実験しているのですが、もしエクストルーダの改造で効果があったら試してみたいと思ってます。良かったら結果出ましたら教えて下さい~
当方は0.4mmノズルのみでしか試しておりませんが、今のところ造形中に空回りしてフィラメントが出力不足になる症状は改善されました。フィラメントを抑えるのがバネになっているので、つかんでいる部分が緩んだり、調節する手間が省けていい感じです!
Good blog! I really love how it is easy on my eyes and the data are well written. I am wondering how I could be notified whenever a new post has been made. I have subscribed to your feed which must do the trick! Have a nice day!
Thank you!
照る照る坊主様
当方も1年前より、2Xを使っていますが、、ノズルトラブルの対処の仕方の記事
は大変参考になりました。
今後もこのような、記事掲載をお願いします。
ありがとうございます。これからもトラブルに見舞われて試行錯誤した際には、記事のネタとして記録していきたいと考えています。(笑)
今後とも何卒ご贔屓に。