2015-07-26 21:51 by 仁伯爵

チルトキット追加後の不満

 前回までに光造形方式の3DプリンターLittleRPにチルトキットを追加した。その後、チルトキットが追加されたLittleRPを運用していくにしたがって、ある疑念が頭の中を離れず常に存在している。それは、チルトキット追加後の造形物の精度が、チルトキット追加前に比べて落ちているのではないか、という疑いである。チルトキット追加前では、テストブロックの一番小さな穴がちゃんと貫通したことがあった。チルトキット追加後には、テストブロックの一番小さな穴が貫通したことはなく、一方がふさがって穴の存在が確認できない事すらあるようになってしまったのだ。さらに、ビルドプレートから造形物が浮かび上がり、底面が湾曲してしまうことがある。最初は剥がし方がずさんだからいがんだのだと思っていたが、ビルドプレートに一部が貼りつき、一部が浮いているので平面のはずが見事な局面になってしまっていたのだ。これは、お金をかけて性能を落としてしまってはチルトキットのために散って行った一万円札たちに申し訳が立たない。何とかしたい。そうでなければモヤモヤしてしまう。このモヤモヤを抱えたまま日々を過ごせば、要らぬ局面でムラムラしてしまうことがある。それでは日常生活に支障をきたしかねない。手を打たねばならぬ。

6ミリメートルの誤算

 では、出力の精度が下がってしまった原因はどこにあるのだろうか。チルトキットの導入により駆動部分が増え、それにより不安要素も増えている。しかし造形してみた感じでは、チルトする動きの部分は造形の精度にさほど影響を与えていないような気がする。一番大事な瞬間、造形物に光を当てるその刹那には可動部分はすべて止まっているからだ。それよりなにより気になるのは、チルト動作をさせるために造形台とペトリ皿の間に挟んだ厚さ6mmのチルト台である。それにより、一番前の穴でプロジェクターをマウントしていてはピントが合わず、プロジェクターの位置を一つ後ろに移動させる必要があった事が気になる。プロジェクターと鏡の距離が離れ、鏡とペトリ皿の距離も離れている。この距離で光が弱くなっているのではなかろうか。たかが6mmのずれが、光造形方式の心臓部であるプロジェクターのセッティングすべてに影響を及ぼしてしまっている。6mmの距離が切ない。

短足による解決

 6mmの距離が切ないのであれば、6mm歩み寄ってやればいい。6mmのチルト台を合わせても元の高さと同じ改造してしまえばよいのだ。具体的には本体を構成する4本のアルミフレームの柱のうち、111mmの前足を6mm短くして、105mmにすればいい。そうすれば造形台の高さが6mm低くなるので、チルト台を載せた状態でチルトキット追加前の状態と同じ高さになる。
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 LittleRPはオープンソースハードウェアである。使われているパーツの情報はすべて公開されている。サポートページから、使われているアルミフレームの情報を見つけた。それによると、使われているのはミスミ社の20mm x 20mmのアルミフレームHFSB5-2020であった。後ろの長い方が330mm、前の短い方が111mmだ。これなら日本国内でも調達可能で割とお安い。6mm引いて105mmのHFSB5-2020-105を2本入手すればいい。Webからの購入には法人として登録する必要がある。今回は念のため前足と後ろ足の両方購入してみた。
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 日本企業による高品質を期待したが、黒いアルマイト塗装はところどころ禿げており、あまりきれいとは言えない状態で届いた。ちょっとがっかりした。小口注文なので嫌がられたのかもしれないが、これくらいでいちいちめげてはいられない。
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 新旧の前足を並べてみた。左側がオリジナルキットに入っていた111mmの前足、右が今回購入した105mmの前足である。
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 ちゃんとチルト台の分だけ短くなっているのが解かる。よしよし。
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 オリジナルのアルミフレームにはネジ穴が切ってあったが、購入したアルミフレームの穴はネジ穴ではない。
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 M5用のネジ切りタップを使ってネジ穴を切っていく必要がある。M5用のネジ切りタップを使う。
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 M5用のネジ切りタップを、タップハンドルに突っ込んで固定する。
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 そして、穴に挿入して強く回し、何度か出し入れしつつ削りかすを掃除しながら置くまで突っ込む。このときローション代わりに切削油などを使うとネジ穴タップの摩耗や、アルミの発熱を防ぎ長持ちさせることができる。
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 105mmの足2本の両端ともネジを切っておく。ちゃんとネジが挿入できることを確認しておく。中にアルミのカスなどが残っていると、ネジがつまってにっちもさっちもいかなくなってしまうことがあるので引っ掛かりが無いことを確認しておく。
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 ちゃんとネジ入ることが確認できたら、さあ組立だ!

短足の組み込み

 LittleRPを組み立てたり、チルトキットを組み込んだりしてきたのでもうここからはお手の物である。まずは前足を止めているそこのネジを外す。
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 チルト台を取り外す。
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 前足と造形台を止めているM5の皿ネジを外す。
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 前足と側面パネルを止めているネジを緩める。左右両方共である。
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 これで前足を止めるものはいなくなったが外す時に引っかかるので、アクリルフードホルダーも外しておく。
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 前足を取り除いたら、側面パネルを止めていた金具を斜めにして、105mmの短足の前足にハメつつ取り付け位置に左右ともに配置する。
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 配置してみると、6mmの隙間があるのが解かる。
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 この隙間を埋めるため、後ろ足と造形台を止めているネジを左右とも緩めて6mm押し下げる。この時、造形台がちゃんと水平になるように水平器を使っって調整する。
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 あとは外した時と逆の手順でハメていけば完成だ!。
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 これで、チルトキット追加前の高さにペトリ皿がマウントされるようになった!

プロジェクターのマウント

 だが待て、よくよく考えてみると、台ごと下げたので鏡とペトリ皿の距離は実は縮まっていない。台も下がったが、それについている鏡も下がったからだ!しまった!盲点だった!だがもう後には引けない。台が6mm下がっていいことが二つあった。一つには、Z軸方向に造形可能領域が6mm伸びた!二つ目は、チルトキット追加時にピントが合わなくなったのでプロジェクターを2つ目の穴に一つ下げていたのが、距離は変わってないはずなのになぜか一番前の穴にマウントしてもピントが合わせられるようになったと言う事だ。鏡とペトリ皿の距離は縮まらなかったが、鏡とプロジェクターの距離はチルトキット追加前に戻すことができた。ただ、プロジェクターの高さがアクリルスペーサー3つとPLAスペーサー1つでは高すぎて投影される映像がビルドプレートの奥にずれてしまう。よってアクリルスペーサー3つのみにしプロジェクターの位置を下げてみたところ、ちょうどビルドプレートに画像がぴったり収まった。鏡とペトリ皿の距離は変わっていないが、プロジェクターを一番前の穴にセットすると言う目的は何とか達成できた。これまでのセッティングの中で一番うまく収まっている。これは憶測だが、オリジナルの前足が111mmという中途半端な数字なのは、もともと105mmで設計されていたのが、チルト機構を後から省いて発売した結果、チルト台分の距離を補うために前足を6mm足して111mmになっているのではないだろうか。そこに前足が長いままチルトキットを追加したから当初の設計からどんどんずれて精度が低くなっていったのではあるまいか。105mmが当初の設計通りだとするとこのしっくり具合に納得がいく。スペーサーがPLAとアクリルの物が混じっているのも、105mmの前足ではアクリルだけでよかったが、前足が111mmになったため、PLAのスペーサーを後から急きょ足したとするとつじつまが合う。そんな想像をしたくなるほど、105mmの前足にするとプロジェクターのセッティングがうまくいく。アクリルフードも6mm足りなくなるのではと思ったが、全然浮いてしまう事もなくちゃんとフード受けに収まっている。

しかして結局のところ

 色々といじくっては見た物の、実のところはチルトキットを付ける前の造形制度に戻ったにすぎず、チルトキットを付けたから精度が上がったと言う事は無い。ペトリ皿とビルドプレートの平行がずれると造形にちゃんと失敗する。中が空洞になった形状を作るときに空気が抜けやすくなったりするのかもしれないが未検証である。実のところ、チルトキットによる恩恵はいまだ実感として得られていない。ただ一つ、いいことがあったとすれば、機体をいじくったりいろいろ調べたりしている過程が楽しかったと言う事だろうか。とはいえチルトキットを追加していたからこそ回避できたエラー等にこれから出会うのかもしれない。もっとも回避できてしまったエラーは認識することができず、その威力はやっぱり実感として得られないのかもしれない。チルトキットが吾輩のあずかり知らぬところで効力を発揮していることを祈りつつ、チルトキットに関するあれこれは、今度こそ一段落としたい。

3 件のコメント!

  • はじめまして。
    私は中国からDLP 3Dプリンターを購入して現在は調整中です。
    色々参考になる記事が多くて楽しく拝見させて頂いてます。
    私の3Dプリンターはテストブロックの穴は全部埋まってしまいます…プロジェクターが原因かなぁ〜と思っています。
    あと、レジンタンクはガラス製ではなく、アクリルとシリコン樹脂の物を自作しています。

    これからも楽しみしてるので頑張って下さい。

    • コメントありがとうございます!

      テストブロックの穴がふさがってしまうのは改善しないといけませんね。
      プロジェクターから照射される像のピントが合っていないか
      もしくは、レジンタンクの底で光が拡散しちゃってぼやけてるのかもしれませんね。

      そうでないとすると、液体レジンが造形された穴に残ってしまって、穴をふさいだまま固まっているのかもしれません。
      その場合は、出力直後に穴にティッシュを優しくあててあげることで穴からレジンをティッシュに吸い出させると穴が出現するかもしれません。

      DLP式も一筋縄ではいきませんよね。
      お互い頑張りましょう!

      • アドバイスありがとうございます。

        プロジェクターのピントは何回も調整しているのですが、一番大きな穴しか貫通することはありませんでした。

        Build Size Calibration を調整する前の、実寸が寸法より大きいサイズの時は2番目に大きい穴まで貫通する事が出来ました。

        レジンタンクは何種類か作って、ガラスでも試してみたのですが、結果は同じでした。

        とりあえず、もう少しいろいろ試してみます。 

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