10GbEがやってきた
先月から一部で熱狂的な盛り上がりを見せている中古L3スイッチAT-X510-28GTXを買ってみた。 AT-X510-28GTX は2012年12月発売らしいので2019年6月現在からすると結構古い機種ではあるものの、現在でも販売が続いており新品を購入すると25万円程度する。それが中古とはいえ秋葉原の某点で数千円で売られているのいう情報がTwitterを駆け巡り、現在の熱狂となっている。話題になって底値からちょっと上がりはしたもののそれでも十二分に魅力的な価格であると言える。1GbEの物理ポートが12×2ポートもあって、VLANが切り放題な上に10GbE対応のSFP/SFP+スロットが4つあり、モジュールを入れ替えることで光ファイバーケーブルだったりカッパーケーブルだったり、RJ45のLANケーブルだったりいろいろ入れ替えて使えるのだ!メカっぽくてカッコいい。
地方在住者としては指をくわえて羨ましいなぁと思いながら見ていたのだが、ヤフオクで出物があったのでぽちっと落札してみて、先人たちの知恵をなぞる形でいろいろやってみたのでちょこっとまとめておきたいと思う。
Fanの取り換えと増設
AT-X510-28GTXの排熱は後部に一つだけ排気用の60mm角のファンが1つついているだけでこれがなかなか強力でうるさい。どれくらいうるさいかというと以下の通りだ。
データセンターなら気にもならないがおうちで運用するなら音は小さい方がいい。えぬえす工房さんの以下の記事を参考に頑張ってファンの換装と増設をやってみた。
AT-x510-28GTXを静音化+ファン端子の増設をしてみる
まずは、背面のネジ3つを外す。一つはシールで封印されている。

これをはがすとサポートがうけられなくなるのだが、元々投げ売りの中古品でサポートなど気にする必要もないのではがして現れたネジをくるくるっと外してしまう。

ネジが外れたら、天板を後ろにずらすと蓋が取れて中身があらわになる。PSU(Power Suppry Unit:電源装置)が2つ内蔵されていて、冗長化されているが片っぽだけ接続して運用しても問題なく、PSU1、PSU2のどちらに接続しても正常稼働する。もちろん両方に接続して電源を冗長化してもいい。PoEに対応したモデルだと2つともつないでると出力できる電力が増えたりする恩恵があるらしいが、このモデルではPoEは付いてないので特に電源を2つつないだからっていいことはあまりない。家庭で使うなら大抵の場合おおもとの電源が一つなのでコンセントに2つつないでもあまり意味ない気がする。
基板を取り外す前に一応、ボタン電池を抜いておいた。この電池はシステムクロックを保持しているので外したら時間が1970年に戻る。作業後はシステムクロックを設定しなおす必要がある。

メイン基板につながってるファンケーブルと、2つの電源ケーブルのコネクターを外して、前面の端っこについてるLEDとコンソール出力コネクタのあるドーターボードを取り外す。

こちらが取り外された基盤。かわいい。

下のネジも外す。

残りの基盤を止めてるネジも外せば、基盤が自由になる。

基板を筐体から剥がしてひっくり返してみる。赤枠で囲った部分が元からファンがつながっているピンである。

その反対側のPSU2のコネクタの隣に、ハンダで埋められた穴がある。個々のはんだを除去してピンを立てる。

このハンダを除去するのがすごく大変だった。こういう本格的な工業製品の無鉛はんだを除去するための設備など持っていなかったので普通の電子工作用のはんだごての温度を最大に上げて、小手先を一番細いやつにしてグリグリ押し付けて溶けた瞬間にハンダ吸い取り線でなんとか吸い取って、やっとのことで穴が貫通するという死闘を繰り広げた。もうやりたくない。個体によってはこの穴が埋められていなかったり、最初からピンが立てられている個体もあるようなので、その辺はガチャ要素的おたのしみである。うちでは2つ買ったが2つとも穴が埋まっていた。
ハンダを取り除いた穴にピンを立てるのだが、ちょうど3Dプリンターのステッパーモータードライバーに使った 2.54mmのピンがあった。パキっと4本折ってつかう。

後はもう、普通にはんだ付けして、分解した手順の逆で組み立てる。ドーターボードを付けるのがちょっと難しかった。正面に飛び出す部分の位置を合わせて取り付けようとすると斜めに基盤を下ろすことになるのでピンが刺さりにくい。ピンをちょっと後ろに押しつつ基板に刺さっていることを確認しながらゆっくりおろすと何とかはまる感じだ。そんなこんなでピンが建った!横の2本のピンも立ててみた。

いよいよファンの取り付けだが、上記の記事にあった通り元々あったファンのピンには逆刺し防止の出っ張りがあるのでこれをニッパーなどで取り除いておく。

上記記事を参考にファンを買ってきた。

元のファンよりだいぶ薄い。

元のネジをそのまま使うとファンが薄くなった分、ガバガバになってしまう。そこでちょうどいい3Dプリンターの出力失敗パーツを見繕ってきて間に咬ませてみた。ちょうどいい!

もう一つ、追加したファンも、上記の記事に倣いCPUのヒートシンクに両面テープで張り付けた。ちゃんと回るか緊張しながら電源ケーブルを刺してみると、回った!冷えてる冷えてる!

ファンを大きくすると周りのチップも冷えてうれしいのだが、ヒートシンクと筐体の蓋の間が20mmくらいしかないので、厚さ10mmのこれくらいのサイズのファンが限界っぽい。
コンソールにつないでみた
コンソールの接続とログイン
ファンを増設できたので蓋をしてねじを締めて、つづいて基本的な設定をしていきたい。さしあたっては、システムクロックを合わせてユーザーを作って、sshでログインして設定が行える環境を作ってみる。
とりあえず、シリアルコンソールに接続してみる。 AT-X510-28GTX のコンソールポートはD-sub9ピンではなくRJ45なので、USB変換ケーブルを買ってきてWindows端末につないでみることにした。
前面のコンソールポートにコンソールケーブルをつないで反対側をWindows端末のUSBポートにつないだ。

ちなみにこのエコボタンを押すと、前面のLEDが全部消える。数字のでてる8bitのLEDも各ポートの接続状況を表すLEDも全部消える。ただそれだけのボタンらしい。WindowsのデバイスマネージャーからCOMポート番号を確認する。当環境ではいろいろなものを過去につないだので番号が進んで今回はCOM5だった。

ターミナルエミュレータを起動して、COM5に接続する。パラメータは以下の通り。
通信速度 | 9,600bps |
データビット | 8 |
パリティ | 無し |
ストップピット | 1 |
フロー制御 | ハードウェア |
エミュレーション | VT100 |
BackSpaceキー | Deleteを送信 |
RLoginで設定するとこんな感じ。

これで接続した状態で、電源ケーブルをつなぐと電源が入り起動の様子がコンソールに出力される。

上の画像は、ブートローダーのアップデート後なのでブートローダーが2.0.25となっているが購入直後は2.0.14だった。ブートイメージもx510-5.4.9-0.1.relではなくx510-5.4.4-3.10.relだった。”Press <Ctrl+B> for the Boot Menu”が表示され”Reading filesystem…”が表示されるまでの間にCtrlキーとBキーを同時推しするとboot menuに入ることができる。boot menuには入らずにそのままカップラーメンができるくらい待つと、ログインプロンプトが帰ってくる。

初期ユーザー、パスワードは下記マニュアルのログインの欄にあるユーザーを使用してログインできた。
CentreCOM x510シリーズ・AT-IX5-28GPX コマンドリファレンス 5.4.9 運用・管理 / システム ログイン
色々コマンドを打ってみる
現状を確認する為、色々コマンドを打ってみた。まずは噂のスタックの状況について確認してみた。
awplus> show stack
Virtual Chassis Stacking summary information
ID Pending ID MAC address Priority Status Role
1 - eccd.xxxx.xxxx 128 Ready Active Master
Operational Status Standalone unit
Stack MAC address eccd.xxxx.xxxx
デフォルトの状態でスタックが有効になっていた。だがboot時のメッセージを見ると、スタックのメンバーを探しに行ったけどメンバーが見つからなかったのでスタックを無効にするともっと早くスタートアップできるよ!って言われてしまっていた。1台しかいないので、マスターになっている。
00:01:06 awplus-1 VCS[1041]: No neighboring members found, unit may be in a standalone configuration
Received event vcs.elected-master
00:01:06 awplus-1 VCS[1041]: Startup speed can be improved by adding 'no stack 1 enable' to configuration
00:01:06 awplus-1 VCS[1041]: Member 1 (eccd.xxxx.xxxx) has become the Active Master
”show system environment”コマンドでシステムの状態を確認してみる。全体的なステータスがFaultになっているのは、電源が片方にしか刺さっていないのでRPS 2のPSUのステータスがFAULTになっているからだ。ファンを追加したことでCPU温度が36℃に抑えられている。はず。いかんせんファン追加前の状態を確認していないのでこの辺は何とも言えない。
awplus>show system environment
Environment Monitoring Status
Overall Status: ***Fault***
Resource ID: 1 Name: RPS 1 ()
ID Sensor (Units) Reading Low Limit High Limit Status
1 Device Present Yes - - Ok
2 PSU Power Output Yes - - Ok
Resource ID: 2 Name: RPS 2 ()
ID Sensor (Units) Reading Low Limit High Limit Status
1 Device Present Yes - - Ok
2 PSU Power Output No - - FAULT
Resource ID: 3 Name: x510-28GTX
ID Sensor (Units) Reading Low Limit High Limit Status
1 Fan: Fan 1 (Rpm) 3636 3000 - Ok
2 Voltage: 1.8V (Volts) 1.789 1.617 1.978 Ok
3 Voltage: 1.0V (Volts) 0.995 0.896 1.099 Ok
4 Voltage: 3.3V (Volts) 3.304 3.028 3.545 Ok
5 Voltage: 5.0V (Volts) 5.053 4.477 5.498 Ok
6 Voltage: 1.2V (Volts) 1.187 1.072 1.318 Ok
7 Temp: CPU (Degrees C) 36 -11 80 Ok
”show interface status”コマンドでインターフェースを確認してみる。27番と28番ポートはスタック用に予約されているのでスイッチのネットワークインターフェースとして使えるのは1~26迄である。 コマンドでスタックを無効化すると28番まで使えるようになる。25と26はSFP/SFP+ポートだがトランシーバーが刺さっていないので”not present”となっている。同様に、”show interface”や”show interface swichport”コマンドでも各インターフェースの状況が確認できるが、出力が長いので割愛する。
awplus> show interface status
Port Name Status Vlan Duplex Speed Type
port1.0.1 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.2 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.3 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.4 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.5 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.6 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.7 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.8 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.9 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.10 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.11 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.12 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.13 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.14 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.15 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.16 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.17 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.18 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.19 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.20 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.21 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.22 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.23 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.24 notconnect 1 auto auto 1000BASE-T
port1.0.25 notconnect 1 auto auto not present
port1.0.26 notconnect 1 auto auto not present
”show system”コマンドでシステムの状況を確認する。
awplus> show system
Stack System Status Thu Jan 01 00:45:28 1970
Stack member 1
Board ID Bay Board Name Rev Serial number
--------------------------------------------------------------------------------
Base 369 x510-28GTX B-0 xxxxxxxxxx
--------------------------------------------------------------------------------
RAM: Total: 494844 kB Free: 381072 kB
Flash: 63.0MB Used: 25.3MB Available: 37.7MB
--------------------------------------------------------------------------------
Environment Status : ***Fault***
Uptime : 0 days 00:45:28
Bootloader version : 2.0.14
Current software : x510-5.4.4-3.10.rel
Software version : 5.4.4-3.10
Build date : Mon Jul 6 07:25:52 UTC 2015
Current boot config: flash:/default.cfg (file not found)
System Name
awplus
System Contact
System Location
”show boot”でブート周りの設定を確認する。このコマンドは 特権EXECモードにならないと撃つことができない。ならずに打とうとすると存在しないコマンドを売った時と同じリアクションが返ってくる。 特権EXECモードになるには”enable”コマンドを打つ。 特権EXECモードから抜けるには、Cntrl+Zを押すか、”disable”コマンドを打つ。まだ設定ファイルが存在しないので、Default boot configに設定されているファイルがnot foundになってしまっている。”write”コマンドを発行することで、現在の設定をファイルに書き込むことができる。設定を変更した後はこまめに”write”コマンドを打たないと変更作業が手戻りしてしまう。.cfgのファイルを複数用意して切り替えて使うこともできる。今どのファイルを使ってるのか、boot時にどのファイルを使うように設定されているのかが確認できる。
awplus>show boot
^
% Invalid input detected at '^' marker.
awplus>enable
awplus#
awplus#
awplus#show boot
Boot configuration
--------------------------------------------------------------------------------
Current software : x510-5.4.4-3.10.rel
Current boot image : flash:/x510-5.4.4-3.10.rel (file exists)
Backup boot image : Not set
Default boot config: flash:/default.cfg
Current boot config: flash:/default.cfg (file not found)
Backup boot config: Not set
Autoboot status : disabled
”show vlan all”でVLANの状況が確認できる。今はVLAN ID 1だけしかなく全ポートが参加している。
awplus>
awplus>show vlan all
VLAN ID Name Type State Member ports
(u)-Untagged, (t)-Tagged
======= ================ ======= ======= ====================================
1 default STATIC ACTIVE port1.0.1(u) port1.0.2(u) port1.0.3(u)
port1.0.4(u) port1.0.5(u) port1.0.6(u)
port1.0.7(u) port1.0.8(u) port1.0.9(u)
port1.0.10(u) port1.0.11(u)
port1.0.12(u) port1.0.13(u)
port1.0.14(u) port1.0.15(u)
port1.0.16(u) port1.0.17(u)
port1.0.18(u) port1.0.19(u)
port1.0.20(u) port1.0.21(u)
port1.0.22(u) port1.0.23(u)
port1.0.24(u) port1.0.25(u)
port1.0.26(u)
”show ip interface”コマンドでインターフェースに振られたIPアドレスを確認する。VLANにアドレスが振られていないので、sshやtelnetではまだアクセスできない。
awplus>show ip interface
Interface IP-Address Status Protocol
lo unassigned admin up running
vlan1 unassigned admin up running
”show ssh”でsshの状況を確認し、”show telnet”でtelnetの状況を確認する。sshは無効となっているが、telnetはデフォルトで有効となっている。
awplus>show ssh server
Secure Shell Server Configuration
------------------------------------------------------------
SSH Server : Disabled
Protocol : None
Port : 22
Version : 2,1
Services : scp, sftp
User Authentication : publickey, password
Resolve Hosts : Disabled
Session Timeout : 0 (Off)
Login Timeout : 60 seconds
Maximum Authentication Tries : 6
Maximum Startups : 10
Debug : NONE
awplus>
awplus>
awplus>show telnet
Telnet Server Configuration
------------------------------------------------------------
Telnet server : Enabled
Protocol : IPv4,IPv6
Port : 23
なんか長くなっちゃったので今日はここまで。こんなはずじゃなかった。次回こそは設定を変えて、いろいろやってスタックを組んだ話をしたいと思う。