2015-05-19 23:21 by 仁伯爵

Nikon Coolpix S51cと過ごした日々

最近、ここ一年ほどで我がブログにも写真が増えていることにお気づきのコアな”照る青メイツ”(照る照る坊主の青空ファンの事。規模は未知数)の方々がもしかしたらいるかもしれない。実はPCの画面キャプチャや、デジカメ写真でより華やかで解かりやすい記事を目指して去年くらいから写真を多用するように心掛けているのである。その掲載された画像作製の中核を担ってきたのはNikonのCoolpix S51cという古いコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)だ。Coolpix S51cは2007年発売で現在は生産が終了しており、この記事の執筆時点から8年前のカメラである。小さくて電池の持ちもいいので旅行に行ったときはもちろん、普段の生活でも邪魔にならずカバンに常に入れて便利に使っていた。とはいっても、これまでカメラに特に興味はなく、このCoolpix S51cもたまたま知人がいらなくなったからと安く譲ってくれたものをそのままこだわりなく受け入れて使っているに過ぎない。そう、吾輩はカメラに関してはずぶの素人なのである。であるので、我がブログの写真も必要最低限の、外すべきネジの場所などの伝えたいことが解かればいいと言う写真が主で、おしゃれ写真とは縁が無かった。

だがしかし!前回の記事、「ThinkPad X31にBluetoothを追加してみる。」の写真がどことなくおしゃれなことにお気づきだろうか。そう、ピントが合う部分が絞られ、おしゃれなボケが効いているのだ!ボケを効かせていない写真でも、以前の記事に比べると格段に画質がきれいで自然な質感になっているのがお分かりいただけると思う。これは私の写真の腕が上がったのではない。カメラが変わったのだ!!

Nikon1 J5との遭遇

色んな人のブログを見るにつけ、掲載している写真がとてもおしゃれなブログがなんだかとてもうらやましく思える時がある。そんな写真と、我が写真とどこが違うのだろうか。構図か、画質か、センスなのか。そんなことを考えていたとき、このNikon1 J5の宣伝記事を目にした。

この散らかっているように見えますか、という問いには即座に否と答えねばなるまい。おしゃれじゃないか。なぜおしゃれ写真になるのか。それは、この記事の中で言われている「要はさ、明るいレンズで絞りを開放にして撮れば、背景がぼけた雰囲気のある写真になるんだよ」というこの一言に尽きるのではないのか。Coolpix S51sでも絞りを開放してやることはできないだろうかとメニューをくまなく探したが、そのような項目は無かった。当たり前か。手軽に難しいことを考えずに写真が撮れることがコンデジのいいところなので、そんなパラメーターは用意されていないのだ。用意されていたとしても、コンデジのレンズで解放できる絞りなどたかが知れているだろう。撮像素子も小さく雰囲気のあるボケが撮れるとは思えない。ここはやはり、コンパクトデジカメを卒業して大人の階段を上るときが吾輩にもやってきたと捉えるべきなのではないだろうか。

上の記事で紹介されていたNikon1 J5は、2015年の4月23日に発売されたばかりのできたてほやほやである。Nikon1というのはNikonのミラーレス一眼レフのシリーズ名である。Nikonの言い方では”レンズ交換式アドバンストカメラ”のラインナップの名前がNikon1と言う事になる。ミラーレス一眼とは、一眼レフのカメラから、ファインダーをのぞくためのミラーが省かれており、レンズに何が映っているかは撮像素子が捉え、画像処理エンジンが処理した後の液晶画面の出力に頼るほかないカメラの事だ。コンパクトデジカメよりもちょっといいカメラらしい。

一眼レフとミラーレス一眼との違いは、ファインダーを覗くためのミラーがあるかどうかだが、ミラーを持たぬミラーレスは一眼レフよりもひとつグレードが落ちるという位置づけであるが故に、装備も一段階ささやかなものとなる。どこがと言えば、代表的なところでは撮像素子の大きさがささやかになるのだ。一般的に光をとらえて映像をデジタル信号に変換するセンサーである撮像素子が大きければ、得られる画像も高解像度にすることができ、ボケもよりダイナミックにすることが可能となる。撮像素子の大きさの規格は大体以下の通りだ。

  • 中判(44mm x 33mm)・・・いわゆる中判カメラの120mmフィルムよりは小さいがデジタルカメラの中では最大の撮像素子。大判ポスターなどに必要な超高解像度を得るためのプロ用。必ずしも画質がきれいなわけではない。
  • フルサイズ(36mm x 24mm)・・・35mmフィルム相当の大きさ。ハイエンドのデジタル一眼に採用されるサイズ。
  • APS-C(23.4mm × 16.7mm)・・・実際のフィルムに合わせて作られた規格ではないため、同じAPS-Cと謳われているカメラの中でもサイズはまちまち。厳密にこの大きさが守られているわけではないといういい加減な規格。
  • フォーサーズ(17.3mm × 13mm)・・・オリンパスが提唱しているフォーサーズシステムで採用されている規格。規格策定当時主流だった4:3の画面サイズに合わせているため19:6が主流になってきた昨今では微妙な存在。
  • 1.5型(18.7mm×14mm)・・・キャノンのハイエンドのコンデジで採用されているサイズ
  • CXフォーマット(13.2mm × 8.8mm)・・・1インチ型。Nikon1はまさにこれ。
  • 2/3型(8.8mm × 6.6mm)・・・ハイエンドのコンデジでよく採用されている大きさ。
  • 1/1.63型(7.8mm×5.9mm)・・・コンデジの中でも割とハイスペックな部類の機種に搭載されがち。
  • 1/1.7型(7.6mm × 5.7mm)・・・コンデジの中でも割とハイスペックな部類の機種に搭載されがち。
  • 1/1.8型(7.2mm × 5.3mm)・・・コンデジの中でも割とハイスペックな部類の機種に搭載されがち。
  • 1/2型(6.4mm × 4.8mm)・・・このあたりからコンデジによく搭載されているサイズ。
  • 1/2.3型(5.9mm × 4.4mm)・・・コンデジや画質のいい携帯カメラに搭載されているサイズ。
  • 1/2.5(5.7mm × 4.3mm)・・・Nikon S51cがこのサイズ。
  • 1/2.7型(5.4mm × 4mm)・・・昔のコンデジでよく使われてたサイズ。
  • 1/3型(4.8mm × 3.6mm)・・・iPhone 5sのカメラで使われてたサイズ。
  • 1/3.2型(4.5mm × 3.4mm)・・・iPhone4Sのカメラで使われてたサイズ。

■参考サイト
撮像素子の大きさ比較 -ガバサク談義-
デジカメ撮像素子、センサーサイズ比較 -カメラと散歩-
画像(イメージ)センサー・(CCD・CMOS)の大きさ比較 -アンタレスのデジカメ部屋-

一番お高い一眼レフの世界があり、その下にミラーレス一眼の世界があり、その下にコンパクトデジカメの世界がある、というのが今のデジカメの世界構造であるようだ。そのなかでミラーレス一眼の世界に含まれるNikon1シリーズの中はさらに、Sシリーズ、Jシリーズ、Vシリーズ、AWシリーズの4つに分かれており、Sシリーズはよりカジュアルに、Jシリーズは真ん中くらい、VシリーズはNikon1の中で最もハイスペックで、AWシリーズは防水仕様となっている。VシリーズがV3までしか進んでいないのに対し、JシリーズはJ5で5つ目の製品となり開発が活発だ。つまりは売れ筋なのだろう。売れ筋であると言う事は巷にユーザーが多く情報交換も活発であることが期待できる。入門機としては最適ではないか。アマゾンの恐ろしいところはそう思った次の瞬間には注文が出せてしまうと言う所だ。注文したら、次の日には届いてしまう。Nikon1 J5は、標準ズームレンズキット、ダブルレンズキット、ダブルズームキットボディのみ、の4ラインナップとなっている。標準ズームレンズキット標準のオートフォーカスつきのズームレンズが、ダブルレンズキットには標準ズームレンズに加えて美しいボケが楽しめる明るい単焦点レンズが、ダブルズームキットには標準ズームレンズに加えてさらに望遠ズームレンズがついてくる。ボディのみを選択した場合レンズがついておらず、それ単体では撮影ができないので、すでに1NIKKORレンズを所有している人向けだ。今回の目的は美しいボケなので、ダブルレンズキットがちょうどいい。

ちなみに、Nikon1シリーズでは、1 Nikkorというシリーズのレンズを取り替えて使うことができる。マウントアダプター FT1を使えば、F NIKKORレンズ(一眼レフ用のレンズシリーズ)を取り付けることができるようになるが、全部のレンズが使えるわけではない。

F Nikkorのレンズをマウントアダプター FT1をかませてNikon1で使うときには、レンズの型番を調べて使えるかどうか確認する必要がある。

そして開封の儀へ

手元に届いたらやることは一つ。開封の儀を厳かに執り行う。Nikon1 J5Nikon1 J5で撮影することはできないので、今回はまだCoolpix S51cに頑張ってもらう。

NIKON_J5_001

なんと、キャンペーン中だったので8GBのmicrosdカードがついているらしい。お得な気分になった。嬉しいので箱の側面も映しちゃう。

NIKON_J5_002

箱を開けると、さらに箱が入っている。マトリョーシカのようだ。

NIKON_J5_003

小さい箱に単焦点レンズとその説明書が入っている。

NIKON_J5_004

大きな箱が本体だ。標準ズームレンズはこっちに入っていた。バッテリーと充電器、ぶら下げるための紐と、おまけのmicroSDカード8Gと、microUSBケーブル、説明書、保証書も入っている。

NIKON_J5_005

本体の裏側はこんな感じ。赤枠で囲ったつまみを右へ動かすとバッテリーとSDカードを入れるための蓋が開く。このつまみはバネなどで戻るようにはなっていないため、バッテリーを入れた後、左に戻さなければ蓋が閉まらない。閉めただけでばちっとロックされて欲しいが、なぜかそうなっていない。

NIKON_J5_006

蓋をあけて、バッテリーとSDカードを入れた様子がこちら。黄色いぽっちでバッテリーが落ちるのを防いでいるが、これがバッテリーを入れるときにも邪魔をしてバッテリーが入れづらい。入れるときには素通りし、出るときだけ抑えてくれるようにしてほしかった。このバッテリーの裏のホログラムシールがNIKON純正バッテリーの証だ。

NIKON_J5_007

そして、レンズカバーを外して、標準ズームレンズを取り付けてみた。カッコいい。ズームレンズの一番先のギザギザの部分を回すことで、ズームしたり引いたりすることができる。なんかプロっぽい。コンデジの時には無かったワクワク感がある。標準のズームレンズは、レンズカバーが自動で閉まるので、プラスチックのレンズカバーは表側にはついていない。とはいえ、この瞼のようなレンズカバーは脆く触るといがんで閉まらなくなってしまうかもしれないので触ってはいけないらしい。

NIKON_J5_008

いよいよ、目的の単焦点レンズに付け替えて写真を撮ってみる。まずは先ほどまでつけていた標準ズームレンズをなんとなくデフォルトの状態でオートで撮ってみた。

DSC_0002

ただ雑然と物が置かれているだけなのにそこはかとなくおしゃれなのは、周りがそこはかとなくぼけているからだ。これはなかなかいいのではないか。続いては、S51Cと、J5で時を同じくして同じもの(Keysmart)を撮った写真を並べてみる。何も考えずに両方ともオートで撮った写真だが、どちらがどちらかは言うまでもないだろう。

DSCN4408
DSC_0003

道具が違うだけでこんなにも違うとのかとウキウキしてしまう。これでWebショップの商品写真などを取れば、商品に対する印象が大幅に変わること請け合いである。ともすれば売り上げに影響するだろう。コンデジに比べて圧倒的にAF(オートフォーカス)の焦点が合うまでが早い。取りたいと思ったらすぐに焦点が合い、すぐにシャッターが押せ、写真に撮れる。一枚撮った直後、もう一枚取れるようになるまでの速さも段違いだ。連射もめちゃんこ撮れる。Nikonの公式サイトによると世界最速らしい。コンデジしか使ったことが無い身としては、ここまで違うものかと感動すら覚える。ホントすごい。

デジタル機器としてのNikon1 J5

カメラとしてはすごい。では、デジタル機器としてはどうだろうか。撮った写真をPCへ取り込み、BlogやWebショップにアップロードするためには、デジタル機器としての使いやすさも気になるところだ。一言でいうと、デジタル機器としては私の環境では残念な結果だったと言わざるを得ない。

まずは、一般的な話として、PCとNikon1 J5の接続にはmicroUSBを使用するが、microUSB経由での給電は受けられず、充電もできない。さらに、バッテリーの充電は、本体から外して専用の充電器で行わねばならず、本体に格納したままケーブルを刺して充電するという手段は提供されていない。これらはコンデジなら当たり前に搭載されている機能だが、Nikon1 J5ではできないというフラストレーションがたまる部分だ。

さらに、Nikon1 J5のWi-Fi機能はNikon1 J5を家の家庭内LANに繋いでファイル共有で写真を取り出せるという機能ではなく、Nikon1 J5がアクセスポイントとなってクローズドなネットワークを形成し、そこにスマホを無線LAN接続させて専用アプリでファイルを共有するという仕組みになっている。これがとても分かりずらい。そもそもWi-Fi使ってアドホックな通信なんて何の意味があるのか、なぜBluetoothじゃなくWi-Fiで1対1の通信をさせようとするのか。Wi-Fiならネットワークに参加できると期待できるのが通常の思考ではないのか。そのうえ、吾輩の手持ちのスマホであるDesireHDとBlackberryQ10では接続出来なかった。DesireHDではNikon1 J5のDHCPからIPアドレスの取得が失敗してしまい接続ができなかった。BlackberryQ10では、Nikon1 J5との間で無線LAN接続ができ、Nikon1 J5に対してpingは通るが、専用アプリから見るとカメラが接続されていませんと言われてしまい使用できなかった。Nikon S51cもWi-Fi機能がついていたが、我が家のアクセスポイントにはなぜか接続できなかった。我が家にはRaspberryPiから、プリンターまで様々な無線LAN接続の機器があるが、Nikonのカメラ以外で無線LAN接続ができないというトラブルに遭遇したことが無い。Nikon製のカメラのWi-Fi機能はどうも不安定で使い物にならない。

そのような無線LANの不安定さを解消する手段として、最近ではWi-Fi機能を備えたSDカードがあり、今までならばそれらのWi-Fi機能を使用することで本体のWi-Fiの不甲斐なさをカバーすることができた。しかし、Nikon1 J5は、外部記憶装置にmicroSDカードを使用するので、Wi-Fi機能付きのSDカードを使用することができない。microSDカードサイズの記憶装置にWi-Fiが搭載されている商品は今のところまだ存在しないのだ。

また、撮影した画像を管理するソフトウェアがNkonから提供されており、それが、Capture NX-Dと、ViewNX-iなのだが、これがなんと、公式ページにダウンロード項目があるのみで説明サイトが無い。ダウンロードサイトからダウンロードするときも、これが何をするソフトウェアなのかの説明書きの一言すら一切ないので、どれをダウンロードすべきか皆目見当がつかないというありさまだ。このあたりが日本企業らしい残念さである。製品は素晴らしいのに、Webサイトやその周りを作りこむのをめんどくさがって不親切なのだ。Nikon1 J5を使用して撮影した4K動画などはこれらのソフトウェアを使わないと利用できないのでインストールは必須だが、わかりにく過ぎる。Nikon1 J5の公式サイトでは綺麗なカメラ女子をターゲットにしているようだが、この調子では公式ページで想定されているカメラ女子のようなライトユーザーはついてこれないだろう。

カメラとしての性能は感動すら覚えるほどの素晴らしさだが、デジタルガジェットとしての出来は0点に近い。Nikonはカメラ屋としての誇りが高すぎてデジタル関連の機能はおまけだと認識してあまり力を入れていないのだろう。8年前のコンデジから抱えていたWi-Fiの問題を8年後のミラーレス一眼でも解消することができていない所を見ると根が深そうだ。動かないならそんな機能は電池を食うだけなので最初からつけなければいいのにと思う。カメラとして優秀なだけに残念だ。ファームウェアのアップデートに期待するしかない。

カメラを以て世界を収めよう

とはいえ、Wi-Fi機能など最初からついていなかったのだと思って、バッテリーもいちいち取り出して充電することを許容すれば、PCとの写真のやり取りはUSBケーブルやmicorSDカードでできるので、純粋にカメラとして使用するならばとてもいい機体だ。動かない機能は最初からついていなかったつもりで使えば素晴らしいカメラだ。もうコンデジには戻れない。レンズも今は2つだけだが、もっとF(絞り)を開放できるレンズや、もっとすごい望遠レンズも将来的に手に入れられれば世界がぐんと広がるだろう。さしあたっては、今持っている2つのレンズを使いこなせるよう、設定値の意味や効果を一つ一つ頭に入れてコツコツやって行こうと思う。おしゃれな写真を見るのは精神衛生的にとてもいい。わくわくするのだ。このカメラを手に入れてから、なにを撮ろうかと考えるのがとても楽しい。取りたいものが無くてもその辺の物をパシャパシャと撮ると今までよりきれいに撮れて、まるで自分の写真の腕が上がったかのような錯覚を得られるのが快感だ。この錯覚による快感が消えてしまう前に、本当に自分の腕を上げていこうではないか。さあ、あなたなら何を撮るだろうか。

 

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