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製品開発
2018-08-13 1:59 by 仁伯爵

革製品の持つ魅力

皆さんの周りにはどのくらいの革製品があるだろうか。革靴、ベルト、財布、名刺入れ、キーケース、手帳、筆箱、ノートカバー、手袋、などなど。ともすれば、ソファーや車のシートなんかも革張りかもしれない。革製品にはそこはかとなく高級感が漂う。合成樹脂にはない説得力がそこにはある。これまでこのブログでは3Dプリンターを使ってABSやPLAでいろいろなものを便利に出力してきた。ちょこっとだけ紫外線硬化樹脂なんかも使ったりした。しかし結局のところ、ネットを経由して3Dプリンターの使われ方を色々と覗いていると、それらの樹脂が最終的な出力物となることは少なく、型を取ったりして別の素材に置き換えるための中間物としての出力となることが多い気がする。家庭用3Dプリンターの出力物が最終的な製品になりにくいのは、積層痕の荒さや、樹脂の強度や特性が要件に合わない事のほかに、プラスチックのどうしようもない説得力の無さがある気がしている。3Dプリンターの出力には大変時間がかかる。大量生産には向かない。少量で採算をとるには、一つあたりの利益が大きい高級品である必要がある。しかしプラスチックにはその説得力がない。どうしてもコストカットされた大量生産品のイメージがつきまとう。革製品はそんな限界を軽々と超える。3Dプリンターで自動的に出力することはできないけれど、その代わりに合成樹脂が持ちえない説得力を持っている。3Dプリンターは最終的な製品を作ることはできなくても、CADで作られたデジタルな世界から最終的な完成品へ至る中間を埋めてくれる。それもかなり柔軟に。その柔軟さを革製品の制作に使うと、CADで革製品の設計が行えるのではないか。型紙だけでなく、整形するための立体的な型の造形も自由自在となる。レザークラフターのデジタル革命や!そのためには何が必要か。菱目打ち機である。

フルメタル万能菱目打ち機

革製品は糸で縫われている。しかし革はぶ厚く硬い。丈夫過ぎる革という素材を糸で縫うためには、布を縫う場合とは違うプロセスが必要になる。事前に縫う穴をあけて置く必要があるのだ。縫い合わせる革同士をノリで固定したうえで、菱目打ちをハンマーで打ち付けて穴をあける。その穴に針を通して縫っていくことになる。この菱目打ちをするのがなかなか難しい。同じ力で真上から角度がつかないように真下へ打ち抜く必要があり、穴の大きさが均等でなければ縫い目が不ぞろいになってしまうのだ。加えてハンマーで打ち付ける瞬間に結構な力が発生しているので丈夫な作業台が必要になる上に、インパクトの瞬間の音が結構うるさい。深夜のレザークラフターには騒音問題は死活問題となる。そんな菱目打ちにまつわる諸問題を解決するソリューションとして、ハンドプレス機を使用した菱目打ちがレザークラフターの間ではポピュラーなものとなっている。検索エンジン先生に聞いてみると、ドリルガイドを改造したものや、木工で作られたものなどがよくヒットする。ドリルガイドを改造したものは、菱目打ちが1本しかセットできないし、木工で作ったらやはり強い圧力をかけた時の耐久性が気になる。それらの問題を解決する必要に迫られ、フルメタル菱目打ち機、レザークラフターGoがここに爆誕したのである。

レザークラフターGoの材料

フルメタル菱目打ち機、レザークラフターGoはすべて既製品の組み合わせでできている。材料は以下のとおりである。

全てネットで注文して手に入る既製品でできている。一部アリババから注文するものについては、中国発送となるので到着まで2週間近くかかる場合があるのでのんびり待つ心の余裕が試される。ナットとボルトは予備も含めて70個ほどあると足りる。クランプとドリルチャックと変換ネジは最大4つまで取り付けが可能だ。今回は予算の関係で3つにしてみた。

組み立てのマンボ

材料を見ただけで勘のいい方なら説明などいらないかもしれない。基本はアルミフレームにアルミフレーム用ナットを入れて、金具とボルトを入れてねじを締めていくだけだ。ちなみに、海外のサイトでアルミフレームを検索するときには、アルミプロファイル(Aluminum Profile)と検索するとヒットする。のこぎりやドリルで正確に木材を加工する木工に自信の無い人でも、レゴブロックを組み立てるのと似たノリで組み立てていくことが可能だ。特に技能は必要なく、誰が組み立てても品質に大きな差が出ることはない。とってもお手軽なのだ。

 まずは、300mmのアルミフレームをコの字型に固定するために、コーナー用の金具で90度に固定する。

続いて、クランプでめちゃくちゃ力をかけるつもりなので、鉄板でさらに補強する。今回は先入れ専用のナットを使っているので、両端を閉じてしまう前に必要な数のナットを事前にアルミフレームの溝に入れておく必要がある。組み立てが進むと、ナットを先に入れるのを忘れていた!というシチュエーションによく出くわす。そんなときには端から要れずとも溝のどこからでも入れることができる後入れ用のナットもある。今回は先入れ用しか使っていない。

 鉄板のネジ穴に合わせて先に入れたナットに、鉄板を合わせワッシャーをかませてねじを締める。

次に、ドリルチャック特ランプの接続だ。ドリルチャックのドリル側のネジ穴はM12である。対してクランプの先はM10のネジになっている。このままでは固定することができないので、あいだにネジ変換アダプターをかませてやるとぴったり固定することができる。車のシフトノブを付け替えるのに使用するものだが、今回の用途にもぴったりんこだ。

クランプをフレームに固定して、ドリルチャックを付け、菱目打ちを固定してみた。台座の部分がまだないので寝かせたままゴム板を置いてみた。完成イメージ的にはこんな感じだ。

このまま寝かせて使うわけにもいかないので、200mmのアルミフレームで台座を付ける。金具でくの字型に固定したものを2つ作る。

これをひっくり返した本体の底に固定する。

固定できたらひっくり返して正しい向きで置いてみる。なかなかかっこいいのではないか。

かっこよくなってきた。テンションが上がったので、ここでヘッドを増やしてみる。

一番上に上げた状態ではレバーがクロスするので、クランプは互い違いに配置する必要があった。台座にゴムシートを敷いてみる。

これではちょっと距離が遠い。菱目打ちをめい一杯長く固定して、ゴムシートを2枚重ねてやっと台座に届く。幸いクランプに固定用の長ナットがついているので、ドリルチャックと長ナットの間にM10の棒ネジをかませることで長さ調節が可能になりそうだ。モノタロウで50mmの寸切りネジを入手してみた。

50mmのネジを使って一番長くしてみたのと、寸切りネジを付けず長ナットで中くらいに調節したのと、ナットを全部外してできるだけ置くまで突っ込んで短くしてみた3パターンを並べてみた。一番短いのと一番長いのでドリルチャックの本体1つ分くらいの幅で調節が可能である。わーい。

最後の仕上げ

大体できたが、最後の仕上げをして完成としたい。アルミフレームの端っこはやっぱりキャップしておきたい。キャップは既製品で購入可能だ。

アマゾンで買うと1個当たり96円だ。ここまで結構費用が掛かっているのでこれ以上の出費は避けたい。ということで、CADでキャップを作り3Dプリンターで作ってみた。

もう一つおまけに、不安定な場所に設置する場合、安定性を確保するために調節可能な足を付けておきたい。これもamazonにたくさんあった。

 

だがこれも、M6の皿ネジを組み合わせるようにCADで作って3Dプリンターで出してみた。

今回使用しているSUSのアルミフレームは、溝の壁にR0.5の溝がほられており、これが溝用のナットをかちっとはめ込むようになっている。これがR0.5の溝であるため、ほかのメーカーのアルミフレームではできない、外側からナットをはめ込むという荒業が可能になっているのだ!

これを、本体の底にたくさんつける。

ここに量産した足を付ける!

ひっくり返すとちゃんと足が踏ん張っている!

見よ!これが完成した万能菱目打ち機、レザークラフターGoの姿だ!!

万能菱目打ち機がもたらすバラ色の未来

革を扱うと、ハンドプレス機がとても重宝する。レザークラフターGoは菱目打ち機と銘打っているものの、菱目打ちだけを目的としているわけではない。それ故の万能菱目打ち機なのだ。穴をあけるためのポンチを取り付けることもできるし、屋号やロゴマークを押し付けて刻印する用途にも使える。ボタンや金具をカシメ打ちする為にも使えるし、一本当たり2.0kN のクランプ3本により型を押し付けたままの状態を長時間保持することで圧力整形も可能だ。もちろん、本来の菱目打ちも3本のクランプでそれぞれ違った菱目打ちをセットしておくことで、カーブに差し掛かったからといっていちいち菱目打ちを交換せずに隣のクランプへ移動するだけでスムーズに作業を継続することができる。道具のセッティングを直すために作業が中断されると、作業を行う者の生産性を著しくそぎ落としてしまう。集中した状態に入ったら途切れることなく作業を継続することができる環境は思いのほか大事だ。細切れの10分を6回と継続した1時間とでは、トータルの時間は同じでも持つ意味が全く違いできる作業の種類が違う。万能菱目打ち機、レザークラフターGoは作業者に最適の環境を提供すること請け合いである。

皆様もぜひ、万能菱目打ち機、クラフターGoを作ってみてはいかがだろうか。今年の夏休みの自由研究にいかがか。クラフターGo自体を自由研究としてもいいし、これを使ってレザークラフトの作品を一つ作ってみてもいいだろう。夏休みの宿題がレザークラフトだなんて、二学期しょっぱなにクラス中の注目を浴びることは間違いない。革製品の醸し出す高級感は人の心をつかんで離さない。万能菱目打ち機、クラフターGoをレッツメイク!

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