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2014-08-27 23:58 by 仁伯爵

スズメバチの襲来

 とある朝、寝ぼけ眼で顔を洗おうと洗面所に向かったところ、なんと歯磨き粉のチューブの上に大きなスズメバチが一匹止まってた。おそらく先日の台風の影響で縄張りの外へと飛ばされてきたのでであろう。そのスズメバチは怒こっている様子もなくおとなしく戸惑っているようにも見えたので、すかさず上からビニール袋をかけて捕獲することに成功した。下手に手を出して刺されては事だと、そのままこの脅威の侵入者をビニール袋に入れたまま放置しておくことにした。このスズメバチは、強靭なる顎でビニールを食い破り始めたため、ビニールは二重にせざるを得なかったが、閉じ込められたまま2週間後に息を引き取った。冷たくなったスズメバチを見て分かったことだが、このスズメバチは雄であった。蜂の針は、卵管が発達してできた器官なので、雌のみが持つ。そう、私が捕まえた彼は針を持っていなかったのだ。

 スズメバチは怖い。日本で生物による死亡事故は、フグや蛇、熊などを抑えて蜂による死亡事故が堂々第一位である。日本一の有害生物を完全な形でとらえることができたのは、思わぬ幸運と捉えるべきだろう。これを標本にしない手は無い。針を持たぬまま知恵を持つ人間に立ち向かい、2週間も生き延びて見せた彼の男気に敬意を表し、最もきれいに見える標本にしようではないか。

透明な樹脂で固めるという選択

 どのような方法で彼を保存するのが良いだろうか。美しく長持ちする形が望ましい。となると、透明な樹脂で固めてその中に浮かべてしまうのが良い。樹脂で何かを作る方法としては、少量でいいのならば常温では液体の樹脂に硬化剤を混ぜて型に流し込むレジンキャストと言う方法がある。透明度の高い樹脂を使えば、とてもきれいな標本ができる。透明な樹脂には、日新レジンクリスタルレジン2 スーパークリアーがよさそうだ。透明な樹脂は月日がたてば黄色く濁ってくるが、この樹脂ならば透明度が高く変色も抑えらるという。手順としては、以下のような流れになる。

  1. スズメバチのポーズを決める
  2. 型の1/4ほどを樹脂で固めて台座を作る
  3. 台座が固まったらポーズを決めたスズメバチを仰向けに入れる
  4. 1/4ほど樹脂を入れてスズメバチを固定する
  5. さらに固まったら、残りの1/2に樹脂を入れて固める

 樹脂は3回に分けて入れる。樹脂と硬化剤の混合液は液体なので、いっぺんに入れるとスズメバチが浮いてしまったり沈んでしまったりしてしまい、思った位置に固定することができない。完全硬化までには室温25度の環境で36時間~48時間ほどかかる。継ぎ足しを行うタイミングは、完全硬化する前の半分硬化した状態、つまり4時間から10時間くらいたったところで行えば、継ぎ足した境界が目立ちにくくなる。これらを踏まえたうえで、いざやってみよう。

スズメバチのポーズを決める

 スズメバチは死亡後は足を閉じて固まってしまっている。がかっこよく見せるには、関節をほぐして足を広げてやる必要がある。
Resin 01
 思った以上にがっしり固まっていた関節をほぐそうとピンセットでぐりっとやってみたところ、折れてしまった。しかし、樹脂で固定するので旨い事浮かせれば、何とかごまかせるだろう。折れた足を無くさないように注意しつつ、次の工程に移る。

樹脂と硬化剤を混ぜる

 樹脂と硬化剤は有毒な化学物質である。説明書きをよく読むと、樹脂は飲み込んだり吸い込んだりすると生殖機能に障害が出る恐れがあると書いてある。恐ろしい。硬化剤に至っては、飲み込むと生命の危険があり、皮膚に触れたら医師に相談するようにと書いてあるではないか。怖い。なので作業尾行うときには、ゴム手袋などを着用して行う。
Resin 02
 樹脂と硬化剤は、100:40の割合で混ぜる。使用した内寸75mm × 40mm × 25mmのシリコン型は、固める物の体積にもよるが、だいたい樹脂60g、硬化剤24gの混合液で満タンになるだろう。なので最初はその1/4、樹脂15g、硬化剤6gを混ぜる。
Resin 03
画像では、樹脂50g、硬化剤20gを混ぜている。余った分を冷凍庫に入れておくことで反応を遅らせ、一段目が固まったところで温めて流し込むというプロセスで行った為だ。しかしながら、冷凍庫に入れて反応を遅らせた状態では粘度が高まっておりそれを再度混ぜるとたくさんの気泡が混じってしまう。*訂正:レジンは硬化液ともどもとても毒性の高いもので、食品と混ぜて保管すべきではなく冷蔵庫で保管するなどもっての外だ。作業中も蒸気を吸い込まないように換気しながら作業するなどの配慮が必要である。ここに訂正いたします。樹脂と硬化剤はその都度混ぜて使用したほうがいいだろう。

型に流し込んで固める

 樹脂と硬化剤を混ぜた混合液を、シリコン型に流し込んで固める。
Resin 05
 この時、ポリカーボネート製真空容器
に真空状態にしておくと気泡が抜けて綺麗にできる。
Resin 04
 この状態で4時間ほど放置し、程よく固まったところで、スズメバチを仰向けで入れさらに1/4足して、4時間放置し、残りを全部埋めて48時間ほど放置すると完成である。硬化待ちの時間はポリカーボネート製真空容器に入れて真空状態にしておく。あまり大きな容器で大量の樹脂を固めようとすると硬化熱が高くなってしてしまい、固める対象を痛めてしまうので、その場合も適度に回数を分けて硬化させるといいだろう

完成!

 完全硬化したら方から外して、紙やすりで上面のあらを削り、プラスチック用コンパウンド で磨き上げて完成である。

Resin 06.1

 泡が多少残ってしまっているが、それもまた幻想的でよいのではないだろうか。上手な人は泡をほとんど残さずに綺麗に固めることができるそうだが、その境地に至るまでにはまだまだ試行錯誤が必要になりそうだ。

Resin 07.1

 この成功に気を良くして、仲間を加えてみた。玄関先で息を引き取っていたコクワガタの雌と、玄関の照明に入り込んでいたカナブンと、庭先で力尽きていたクマゼミである。コクワガタの方は、硬化が始まるまでにいろいろいじくってしまったので気泡が入りまくってしまっている上、中央からずれてしまっている。カナブンの方は半球型で固めている。サイズがぴったりでとてもうまくいった。クマゼミのは攪拌が不十分だったため、レジンの流体が残ってしまっている。見た目には混ざっていても、しっかりと1分以上混ぜなければいけない。

 毒性のある化学物質を扱うので注意は必要だが、いまだに夏休みの自由研究のネタが見つからずに路頭に迷っているお子さんをお持ちの方々は、これを提案してみてはいかがだろうか。この季節、山道を歩けば昆虫の亡骸はごろごろしているだろう。昆虫採集と東急ハンズでの材料購入に一日、硬化に3日で宿題提出にぎりぎり間に合う計算だ!そうでなくても、童心に帰って井上陽水の少年時代を聞きながら昆虫標本作成に興じてみるのも、乙なものであろう。ぜひ、夏の終わりにおすすめホビーである。

2 件のコメント!

  • 固める際に真空状態にしなくても液剤を入れた時に、ドライヤーなどで温めてやると綺麗に気泡抜けますよ

    • コメントありがとうございます。温めるといいんですね。
      真空にすると余計に気泡が中から出てくる気がして困り果てておりました。
      次チャレンジするときにはやってみます!

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