2018-02-26 20:45 by 仁伯爵

スプールの設置環境をめぐる2つの問題

 FDM式(fused deposition modeling 熱溶解積層方式)の3Dプリンターのフィラメントをどうするかというのは、3Dプリンター使いにとっては永遠のテーマである。我が家の3DプリンターであるところのReplicator2xはエクストルーダーが2つついて2色刷りができる仕様になっているため、背面にフィラメントスプールをひっかけるホルダーが2つ付いている。ホルダーと言ってもプラスチック製の棒が2本出ており、そこにフィラメントスプールを刺すだけの簡単なもだ。このフィラメントホルダーに取り付けられたフィラメントスプールは取り換えが簡単だが、背面にあるので壁際なんかに3Dプリンターを配置している場合は割と面倒だ。そしてスプールの取り換えは色を変えたいときやABSとPLAを使い分けたいときなど結構頻繁に必要になってくる。そのたびに背面に手を伸ばしてごそごそとスプールを取り外し、ほどけないように気を使いながら取り換えるのはめんどくちゃい。

 そして、「スプール取り換えるのめんどくさい問題」と並んでもう一つ考えなければならないのが、「スプール送り引っかかり問題」である。プラスチック製の棒が出てるだけの状態だと摩擦が結構大きくてエクストルーダーにかかる負担が大きくなってしまっていたりする。Replicator2Xを購入した直後はフィラメントが詰まってしまって出てこないという症状にひどく悩まされるというのが通過儀礼のようになっている。エクストルーダーを改造したり、ステッパーモーターに取り付けたギアの前後の位置を細かく変えてみたり、フィラメント送りの速度をいろいろと調節して見たり、それらの涙ぐましい努力の結果、現在では一般的なABSやPLAを使うときはほぼフィラメント詰まりに悩まされることがなくなった。どの対策が功を奏したのかと言われたらおそらく一番効果が顕著に感じられたのはフィラメントスプールをスムーズに送れるようにフィラメントの設置を工夫した時だったと思う。(個人の感想です。)

 「スプール取り換えるのめんどくさい問題」と「スプール送り引っかかり問題」を解決するため、以前の記事「3DプリンターReplicator2Xのフィラメントとメタルラックの親和性の追求」で紹介した通り、メタルラックを使用することで対策を行った。

蘇るめんどくさい問題と引っかかり問題

 メタルラックにチューブに通した状態で複数並べておくだけでフィラメントの交換作業はとても簡素化されたが、運用していくとやはり問題が見えてくる。一本の金属棒にすべてのフィラメントを通しているので、真ん中あたりのフィラメントを使い終わると抜くのが大変なのだ。すごくめんどくさい。

 また、ゴムライクフィラメントなどの詰まりやすいフィラメントを詰まらせてしまったときに、詰まる状況を確認しようと出力中にずっと見ていたら、金属棒が細いのでスプールの回転がスプールの中心で回らず、結構引っかかってる様子を目の当たりにした。背面のスプールホルダーよりもだいぶスムーズになったと思われていたメタルラック作戦だが、まだ改善の余地があったのだ。

車輪の再発明

 スプールをスムーズに回すツールとして、ベアリングの上にスプールを置いて円滑なフィラメント送りを実現するというアイデアが前から存在しており、Thingiversにもたくさんのモデルがアップされている。ベアリングの上に置くとスプールの径や真ん中の穴の大きさにかかわらず安定して均一な回転が得られる。

TUSH – The Ultimate Spool Holder
Universal Filament Spool Holder
Small Spoolholder – 100mm Remix
Fully printable easy spool holder
Spool Holder SR

 すでにたくさんあるのに態々同じものを一から作るのを、無駄なことのたとえとして「車輪の再発明」などと言ったりする。しかし車輪の再発明は自覚的にやればよい練習になるのだ。これをメタルラック上に配置する目的で一から作ってみた。

ヴァージョン1の完成

 使用するベアリングは、一番手に入りやすくて大きさも丈夫さも手ごろな608のベアリングを使用することにした。手持ちのスプールで一番大きいものは直径240mm、一番小さいものは直径160mmだった。

 どっちを乗せても快適に回るベアリングの距離は、85mmくらいが良さそうだ。

 ベアリング以外にナットやボルトを用意しなくてもいいように回転軸をベアリングの中心にはめ込むことで固定するようにしてみた。

 これを立体的にしてみるとこんな感じ。

 これはこれでよさそうだが、メタルラックに乗せるには安定性がなさそうなので、ラックに固定するバンドを通す穴をあけてみる。

 出力してみるとこんな感じ。

 良いのではないだろうか。ヴァージョン1の完成である。

ヴァージョン2の到来

 ヴァージョン1を量産してメタルラックに設置しようともくろんでおりましたところ、とあるメーカーの中華フィラメントを乗せてみたら、アーチ部分が引っ掛かってうまく回らない奴がいた。ネジで止める方式のスプールのようであったが、ねじを強く締めすぎていて、スプールがエリザベスカラーのような形にいがんでいたのだ。ヴァージョン1はスプールを抑えて置くアーチ部分を大きめにとったのがあだになった。そこで、アーチ部分を削ったヴァージョン2がこちら。

出力してみたら、こんな感じ。問題のスプールも干渉することなくスムーズに回った。

 でっかいスプールもちっさいスプールもOKだ。

量産アンド設置

 形が決まったところでたくさん作って設置してみよう。

 そして設置。簡単に取り外しできるように作った穴をマジックテープで留めてみた。

 下から見たらこんな感じ。

 ついでに、今まではチューブをマジックテープでこんな風に止めていたのを、

 こんなのを作って留めるようにしてみた。

 設置完了。とてもスムーズに各フィラメントが均一な力で手繰り寄せることのできる環境ができた。

 使わないときにはラックに引っ掛けて置ける。これで、どの位置にあるスプールもサクサク取り換えることができ、回転もかつてなく抵抗少なく回るようになった。フィラメントをたくさん使いまわせるようにもなった。

最後に残った問題

 近年の3Dプリンターの発展は著しく、ちょっと前まではReplicator2Xの2in2outの2色刷りがせいぜいだったが、aliexpressやebayを覗いていると、2in1outのエクストルーダーパーツをちょくちょく見かける。ヘッドが2つあると使用していないほうのヘッドが造形物をひっかけて造形失敗するという悲劇が多数引き起こされてきた。2つのヘッドが調整の難易度と失敗の頻度を上げている。出力するヘッドが1つになれば多色刷りでも造形の成功率がぐっと上がる事が期待できるのだ。さらに最近では2in1outよりも3in1outのほうがよく見かけるほどだし、6in1outのパーツすら見かけるようになってきた。常に複数色のフィラメントを送り出せるような環境に対するニーズは今後増えてくるだろう。取り換えやすさや送り出しやすさの問題は解決されたが、最後に湿気の問題が残る。開封済みのフィラメントを多数出しっぱなしにしておくと、吸湿によるフィラメントの劣化に気を配る必要が出てくる。密閉容器による解決策を提示する製品などもちらほら見えるけれど、個人的な経験から言うと、そこまで神経質になる必要はないような気がしている。並べたフィラメントの中には開封後だいぶたつものも含まれているが、吸湿が原因で造形に失敗したり目に見えて気泡が混ざりプチプチ音がするなどの異常は見られない。おろしたての新鮮なフィラメントと長らく放置されたフィラメントでそれほどの差は感じられない。最適なのは設置してある部屋自体の湿気を除湿器で抑制する事なのではないだろうか。ただの経験則なので確たる根拠があるわけではないが、今のところ湿度が高くなる季節には除湿器で除湿する以上の対策を取る必要を感じていない。今後フィラメントの著しい劣化を目の当たりにしたらその時にまた考えることにしたい。

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