心の隙間を埋めるWindowsタブレット
おうちで料理をしているとき、洗濯をしているとき、掃除をしているとき、昔ならずっとTVをBGM代わりにつけていた。地上波がデジタル化される前はそうだった。平成が過ぎ去り令和を迎えた昨今、家でのくつろぎの時間はTVを見るよりネット配信動画を見る機会のほうが多いのではないだろうか。そんな時代の移り変わりの中で、変わってしまったライフスタイルを豊かにするには家の中でWindowsタブレットを使うととても幸せになれる。料理中、掃除中、洗濯物をたたみながら、家のどこにいてもちょっとしたWeb閲覧やら動画の閲覧やらをスマホより大画面で行える。それに加えてモバイルOSの制約を受けない広範なソフトウェアの実行も可能となるのだ。
そんな用途に使うに最適なWindowsタブレットはどれざましょ。宅内で持ち歩く用途にはarrows tabの型落ち中古品をねらえば1万円そこそこでWindowsタブレットが手に入る。我が家では今年に入ってからネットオークションで8000円で買ったQ509/VBをつかっている。Wacomのデジタイザを採用しており、学校で配られたいわゆる文教モデルという奴で、大量にネットに中古品が放出されていた一台を確保したのだ。Windows11のハードウェア要件もクリアしていたのでちょちょいとアップグレードしてみた。これで2025年10月のWindows10のサポート終了後も問題なく使い続けられる。なかなか使い勝手がよく、ちょっとしたWeb証券の取引アプリや動画配信の視聴、床について寝る前のWebブラウジングや電子書籍の読書に使うのにちょうどよかった。
購入後しばらくはご機嫌に使用していたのだが、半年ほど使った中でちょくちょく不満点も出てきた。やはりCeleron N4000のメインメモリ4GBではパワーが足らず、ABEMAのストリーミング動画をピクチャーinピクチャーで表示しながらネット証券の取引アプリでチャートを表示しておくと、動画が時々カクカクと止まってしまうことがあるのだ。知らず知らずのうちに動画をスムーズに再生させるためになるべく触らないように気を使っている自分に気づいたとき、もうちょっとスペックのいいのが欲しいなと思うようになった。
ネットオークションの闇
そんな不満を解消すべくネットオークションでお手頃なWindowsタブレットはないかと検索していたところ、Q509の型番に2つ足したQ5011が2000円で出品されているのを見つけた。Q509の後継でCPUがCeleron N4000からN4500へとちょっと強くなっている。これで動画がカクカクしなくなるのではないか。
だがこの激安価格には理由があり、メインのストレージであるeMMCが無いらしく、「起動可能なデバイスが見つかりませんでした」というエラーが出るという。
これについては2つの仮説に基づく解決策を試してみたい。
仮説その1
「Q5011 起動可能なデバイスが見つかりませんでした」でググると、Q5011のBIOSセットアップメニュー一覧のPDFが引っかかり、その中に以下のような記述を見つけた。
Windows 10(UEFI モード)以外の OS から起動すると、「起動可能なデバイスが見つかりませんでした」、「セキュアブートに失敗しました。** アクセス拒否 **」などのメッセージが表示されることがあります。
また、起動メニューから起動デバイスを選択したときに、「選択したデバイスから起動できません
でした」と表示されたり起動メニューが再表示されることがあります。
これらの現象が起きた場合は、「セキュアブート機能」を「使用しない」に設定してから OS を起
動してください。
ARROWS Tab Q5011/GB ARROWS Tab Q5011/GE BIOS セットアップメニュー 一覧
もしかすると、前の持ち主が廃棄するにあたりeMMCの中身を消去し、セキュアブートを解除していないからそうなっているのではないかという仮説を思いついた。上記のとおり、セキュアブートを無効にしてみたらeMMCを見つけたりするのでは?試してみたい。
仮説その2
とあるネット匿名掲示板に、「Q5011の無線LANモジュールのコネクタにSSDを刺してBIOSから無線LANを有効にするとSSDが認識される」という旨の書き込みを見つけた。もしこれが本当なら、SSDを内蔵させて、無線LANをUSBのアダプターにしてしまえば使えるのではないか。USB-CとUSB-Aが並んでついている。USB-Aに無線LANアダプターを付けてもUSB-Cに干渉せずに使えそうだった。試してみる価値はありそうだ。
2000円ならこれらの実験をして失敗をしても痛くない価格である。どうしても上記の2つの仮説を検証してみたくて、ポチってしまった。
仮説1の検証
届いたQ5011のUEFIメニューから簡易診断を実行してみると、はやりeMMCに問題があると表示される。ググってもエラーコードE104-1-1002はやはりハードウェアエラーらしい。

それでも一縷の望みを託して、まずはBIOSのセキュアブートを「使用しない」に変えてみて、eMMCが生えてくるか試してみてみようとした。そしたらびっくり。最初から「使用しない」になっていた。念のため「使用する」に切り替えてみたりしたが、BOOTメニューにeMMCドライブが表示されることはなかった。
だが、FujitsuのWebサイトからBIOSを最新版にしてみたら、もしかしたらなんかの拍子にeMMCを見つけてくれるかもしれない。そんな期待をもって、BIOSの更新を試みた。
BIOSの更新はWIndows上から行う必要があったため、「起動可能なUSBドライブを簡単に作成できます」でおなじみのRufusをつかって、Windows11のWindows to GOディスクを作ってみた。
Windows to GoはWindows10で提供されていた、外付けディスクからWindowsを起動できるディスクを作成する機能だが、Windows 10 バージョン 1903を最後に開発が終了しその後のバージョンからは削除されている。それが、RufusとWindows11のインストールメディアのイメージを使うとWindows11のto GOが作成できる。

最初、デバイスでUSBメモリを指定してto GOディスクを作成してみたところUSB3.2のUSBメモリだったにもかかわらず、完了まで15時間かかり、完成したディスクでQ5011で起動させようとしたところ24時間かかった上で起動に失敗した。
Rufus taking more than 15 hours to create a Windows to go USB
上記の通り、私の環境特有の問題ではなく、なにやらみんなそうなるらしい。なので、2.5インチのSATA接続のSSDにUSB接続の変換デバイスを使用してそいつにWindows11 to GOをぶち込んでみると、あっさり2分ほどで作成が完了し、Q5011からの起動もあっさりできた。

一通りドライバーと、Windowsのアップデート、オプションのアップデートを適用した後でBIOSを最新版にしてみたところ、なんと!だめでしたー。そうですよね。やっぱりソフトウェア的な問題で見えないのではなく、ハードウェア的にだめらしい。
仮説2の検証
ならば、ハードウェア的なアプローチをとろうではないか。Q5011の裏ブタは、爪で止められているだけなので樹脂製の薄いピックなんかをかませてこじっていくと、ぱっくり開く。そして中を見てびっくり、Q5011は防水機能があるとうたわれているモデルなのだが、中の防水シートが破れてはがされた形跡があった。そのはがされた部分の下に何やらコネクタがあり、モジュールが抜き取られているのが確認できた。

eMMCはボードに直接はんだ付けされていることが多いが、Q5011ではこの白い部分に取り外し可能なeMMCモジュールがついていたらしい。ChatGPTにこの画像を見せて聞いてみたところ、このコネクタはFujitsu独自のBord to Bordコネクタである可能性が高く、適合するモジュールの入手は困難であろうとのことだった。eMMCモジュールが汎用的なものであればワンチャンあるかと思ったが、そうは問屋が卸さないらしい。この世の中は私に厳しくできている。
ならば当初の予定通り、分解を進めると、バックパネル、フロントパネル、メインボードの3枚におろすことができた。



この3枚目のご覧あれ。お気づきだろうか。2本のアンテナ線が出ているちっこいモジュールがWi-Fiモジュールだ。御覧の通り、M.2接続ではない。はんだ付けされており、取り外すことができない。某匿名掲示板の書き込みなど信用してはいけないのだ。AIはハルシネーションをおこすから使い物にならないなどという言説があるが、自然人も普通にハルシネーションを起こす。ネット上の情報の真偽などそんなもんなのだ。これでいいのだ。
結論
時々ネットオークションに大量放出されるeMMCモジュールが見つからないというエラーが出る格安機体は、eMMCモジュールが取り外されており、適合するeMMCモジュールはアリエクでもebayでもヤフオクでもメルカリでも見つからず、2025年5月現在では入手は困難である。
現状、外付けストレージにOSをインストールしてブートするくらいの使い道しかない。Steam Deckは内蔵microSDカードスロットに取り付けられたカードからのブートが可能だったが、Q5011では内臓microSDカードスロットからのブートはできなかった。ブートするにはUSB接続のドライブからブートするしかない。
外付けSSDのwindows11 to Goから起動して使っていた際、Q5011でもABEMAの配信動画がカクカクする症状は見られたので、Q509とQ5011で体感できるほどのスペックの差はないと思われる。
Q738あたりなら、ストレージはm.2接続のSSDになっているらしく、一回り大きくなってしまうが狙うならそっちを狙うべきかもしれない。