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3Dプリンター
思う所
2014-02-07 23:08 by 仁伯爵

約束された正常なる造形を求めて

2013年9月から3Dプリンターをいじりはじめ、現在ではだいぶ安定的に造形物を出力できるようになった。いまやRaspberry Piのケースや、Replicator2Xの改良エクストルーダーまで、プリントしたいと思ったら3Dデータがあれば思うが儘に出力できる。戯れに立体パズルをのデータを作って出力し遊んだりもした。パラダイスだ。
しかし、ここに至るまでにはそれなりの苦労があった。前回の記事ではすんなり卵を抱えたドラゴンがテスト出力ができているように見えたかもしれないが、実際には正常にドラゴンが出力されるまでに幾多の失敗乗り越えてきたのだ。これは家庭用3Dプリンター全般に言えることだが買ってきてそのまま使えるほどの完成度はないのである。熱融解積層方式の家庭用3Dプリンターの中ではハイエンドのカテゴリーに含まれるであろうReplicator2Xであっても例外ではない。この失敗作の数々を見よ。
DSCN3379
前列に居並ぶは、正常なる造形に至る礎となった尊い犠牲の数々だ。後列は出力されてはいるものの、精度が低いところからの改善の歴史である。では、その改善の過程を一つ一つ述べていこう。

目を離すと造形物がごちゃごちゃの塊になる問題の解決

3Dプリンターの出力完了までにはとても時間がかかる。ドラゴンの出力完了には2時間弱かかった。なので、出力開始をReplicator2Xに指示した後は完了するまで他のことをして待つことになるのだが、目を離すと造形物がとんでもないことになっていることがよくある。最初に遭遇したのが、この造形物が謎の塊になってしまう問題である。どういう症状というと、次の写真のようなものである。
katamari
左は、一段目からプレートに張り付かず、そのまま気づかずに出力を続けた場合の失敗作である。プレートに張り付いていないので出力ノズルの先端が貼りつかずに浮いたフィラメントを引っ掻き回し、さらにノズルからもフィラメントが供給され続けるので結果的にこねくり回されてABSの塊となってしまうのだ。
右の失敗作も最初の数段こそ出力されているが、途中から同様にプレートからはがれてノズルの先端に干渉してしまった失敗パターンである。
左の状態になるとノズルの先端をフィラメントとが覆ってしまってもなおノズルが過熱され続けるのでノズルの先端が焦げてしまって次回からの出力におこげが混じってしまうことになる。ノズルの洗浄をせねばならずめんどうなので、そうなる前に出力をキャンセルする必要がある。
Webで検索してみると、プレートに造形物が貼りつかずに反り返ってしまい、悩んでいる人々の声は多く見つけることができた。そういった方々はどうしているかというと、だいたい以下のような対策をとっているようだ。

  • プレートにASB溶液を塗る
  • プレートのカプトンテープの油分や汚れをよく拭く
  • プレートのカプトンテープをやすりなどでわざとささくれ立たせる

先人たちの涙ぐましい努力の末の経験則を自分に適応できるか検討してみた。ASB溶液を新たに買うのはお金がかかるので最終手段だ。カプトンテープをわざとささくれ立たせるのは、カプトンテープが勿体ない。カプトンテープは国内で買うと高いのだ。なので、すぐに試せる、プレートのカプトンテープをよく拭くという対策をとってみたが、結果は改善されることはなかった。
ではどうやって私がこの症状を乗り越えたのか。その答えは、なんと!プレートとノズルの間隔の再調整だ。私の環境でのこの症状の原因は単純なところにあった。プレートとノズルの距離が離れすぎていたのだ。Replicator2Xではプレートとノズルの先端に付属のカードがちょっと引っかかる程度に調節する。それをやり直してほんのちょっと間隔を狭くしてみた。ほんのちょっとだ。けっか、プレートから造形物が浮くことはなくなった。これで、ドラゴンの出力程度は完了できるようになった。

長時間の出力時に途中でフィラメントが出なくなる問題の解決

ABSの塊にならずに出力できるようになって以降、数十分程度で出力できる造形物をいくつか出力した後、もう一度ドラゴンの出力を試みた。当然のごとく成功するものだと思っていたら、次の写真のような失敗をしていた。
denai
どのように失敗しているのか確認するため、出力開始後しばらく様子を見ていると、ノズルの先端から供給される溶けたフィラメントが少しづつ先細り、45分を過ぎたあたりでフィラメントが出なくなってしまうという症状に見舞われていることが分かった。
この問題の解決策は、Webの海原にあった。下記URLの記事がとても参考になった。

https://groups.google.com/forum/#!topic/jmb-ug/VhMCYglPD2s

要するにエクストルーダーがフィラメントを抑える力が緩んでしまっていたのだ。上記URLを参考にエクストルーダーを分解、調整、掃除することでフィラメントがロードされなくなるという症状は改善された。エクストルーダーが緩んでしまう問題は多くのユーザーが苦しんでいるらしく、有志によって作成された改良版エクストルーダーの3Dデータがthingiverseにあった。このデータでエクストルーダーを出力し、ばねとベアリングを買ってくれば改良版エクストルーダーが作れそうだ。そのうち試してみる予定である。実行したら記事にしちゃおうと思う。

出力精度を上げようとする試み

上記2つの対策により、出力の失敗はほぼ起こらなくなった。そうなると、出力の粗さが気になり始める。Replicator2Xを選んだのは、2色刷りができるということもあるが、他の家庭用3Dプリンターに比べて少し値段が高く設定されており、その分出力が綺麗だとの評判を聞いたからだ。MakerBotの公式HPや他Blogの記事などを読んでもきれいな出力面の造形物の画像が踊り、期待に胸ふくらませた。しかし、自分の出力物をそれらと比べると、いささか見劣りがする気がしたのだ。神戸のポートアイランドにあるMaker’sで行われていた講習会などに参加して出力物を講師に見せてみたが、「綺麗に出ているほうだ」などと言われてしまい釈然としなかった。
Dragon1
表面をだいぶ整えてみたものの、竜の顔はギザギザだし、抱いている白いハート形の卵は層と層の間に隙間ができてしまっている。これだと、複数の部品を組み合わせるようなものを出力したら、精度が低すぎて組み合わせられないのではないかという不安がよぎった。そこで、本体の上に水平器を置いて測ってみた。四隅と出力プレートの真ん中でそれぞれ測ってみたところ、向かって右奥へ微妙に傾いていることが分かった。そこで、本体を水平になるように下にカグスベールをかませてみたところ、出力精度が若干改善した。

Dragon2
最初の写真と比べてみても、竜の顔のギザギザはだいぶ解消されている。まだまだ荒いが許容範囲内だろう。ついでに、SDカードに入っていたテストデータではなくThingiversのデータをダウンロードしてMakerBot社のスライサーであるMakerWareで出力精度をHight(積層高0.10mm)に設定して出力してみた。
Dragon3
とてもきれいに出力できた。もともとのデータが荒かったのもあったようだ。結論としては本体を水平にするだけで結構出力精度が変わるということと、積層高によってもやはり出力精度が全然違うんだなぁという事がわかった。

まだ手に入れて半年もたっていないので深刻なトラブルには遭遇しておらず、これまでに蓄えたノウハウはこの程度にとどまる。これからいずれもっと大きな問題にぶち当たるんだろうなと予感させる機体であるが、比較的きれいに安定稼働できているのでこのまま色々出力していこうと思う。本体購入と同時に買ったフィラメントが開封されずに押し入れの奥に難色かあるので、これを手軽にロード、アンロードできるよう棚を工夫してみたりしたのだが、それはまた次回述べることにしよう。

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