IBM Thinkpad X31の延命
以前、3Dプリンターの管理端末にしようとして残念ながら挫折し、しばらく出番が無かったX31だが、このたびLinuxmintやLinuxbeanを使えば、ubuntuの最新版相当のOSがインストールできるじゃないかと言う事が解かり、お出かけ用端末として復活することになった。Thinkpad x31は、干支が一回りするほど前の機体であるが、B5サイズで小さなカバンにもすっぽり入り、少々の乱暴な扱いにも耐える堅牢さを持ち合わせているため、外出時にもっていくPCとしてはとても扱いやすいのだ。CPUやグラフィックの非力さは否めないが、メモリは最大2Gまで積めるので、LibleOfficeを使って書類作成したり、Webブラウザーで調べものをするくらいならストレスなく使える。X31のCPUであるPentiumMが物理アドレス拡張に対応していないため、物理アドレス拡張が必須となる最新のOSはインストールできないことが多い。Windows8以上や、Ubuntu13以上がこれに当たる。しかし、LinuxbeanやLinuxmintを使えばno-PEAがブート時のオプションとして指定できるので最新版でもインストールが可能である。LinuxbeanとLinuxmintはUbuntuベースの軽量linuxだが、ubuntu14をベースにしている最新版でもインストールが可能だった。メモリを増量し、Bluetoothでスマホとテザリングをしてネットにつなげば、お出かけ用端末として十分なパフォーマンスを発揮するのではないか。
x31にはいくつかのグレードがあり、Bluetooth対応なのは最上位グレードの2672-PHJのみである。今てもとにあるのは残念ながら、2672-NBJだ。しかし悲しむ勿れ、Lenovoに売り渡される前のIBM時代のThinkPadがいまだに根強い人気なのは、そのメンテナンス性の良さからだ。ヤフオクやebayなどでx31に搭載されていたBluetoothモジュールを入手すれば、公開されたThinkpad x31,32保守マニュアルに従ってハードウェアをインストールしてしまうことが可能なのだ。ファンが多いので探せばそのあたりの部品も安価で豊富に残っている。万が一分解して壊してしまっても、タンスの肥やしになってしまうはずの機体だったものだ。いじくり倒して遊んでしまおう。その結果使える機体になればめっけものだ。今回はメモリの増量と、Bluetoothの追加を行ってみる。
メモリの増量
まずはメモリの増量だ。はじめは512MBしか積まれていなかったが、メモリスロットは2つあり、それぞれ1GB、合計2GBまで搭載可能らしいので、めいいっぱい2GB詰んでしまおう。PC2100(DDR266)、PC2700(DDR333)、PC3200(DDR400)の200pinS.O.DIMMが搭載できるが、Intel 855GMの制限でどれを積んでも266MHzになってしまうらしい。
メモリの増量はいたって簡単。赤丸のプラスネジを外して裏のカバーを外す。
ふたを開けると、メモリスロットが2つと、Bios用のバッテリーが見える。Biosのバッテリーが切れると、起動するたびに時間を合わせろと言うエラーを吐く。わがX31も、放置している間にこのバッテリーが切れてしまっていたのでメモリ交換のついでに交換しておく。
バッテリーは両面テープで基盤に張り付けられているので、基盤を損傷しないように慎重に剥がす。バッテリーとメモリの増量が終了したら、ふたを閉めて電源を入れてみる。ついでにIBMロゴが表示されているところでAccessIBMボタンを押して、メンテナンスメニューに入り、”Utilities”をクリックし、”Run Diagnostics”をダブルクリックする。
上部の”Diagnostics”メニューを選択し、”Memory Test – Full”を選んでエンターキーを押す。これで詳細なメモリーテストが行われるが、Fullを選ぶととても時間がかかるので、Quickでもいいかもしれないが、今回は古いメモリーを使っているので一応Fullでチェックしてみる。
そのあと、どのメモリーをチェックするのかを選ぶ画面があるが、一番上のALLっぽいのを選択してエンターを押す。この写真は撮り忘れたので割愛させていただく。そうすると、メモリ―チェックが走り出す。とっても時間がかかるのでいったん放置しておくのがよろしかろう。
メモリースロットの選択画面に戻ってPASSEDと表示されれば、メモリーテストに合格だ!
上部のメニューでQUITを選んで”Diagnostics”画面を抜けて、左側の”Information”を選択する。ちゃんと2024MBと認識されているのが解かる。
Bluetooth用のLEDランプカバーの交換
ディスプレイの下部と、裏側にバッテリー状況やスリープ状況、Wi-FiのON,OFFを知らせるためのLEDランプがある。ここに、Bluetooth搭載モデルでは、Bluetooth用のランプがある。このランプ自体はBluetooth非搭載のモデルにも実は搭載されていて、カバーで隠されている。カバーを交換するだけでBluetooth用のランプが追加できるのでカバーを交換してみる。
カバーをカッターの刃や精密ドライバーのマイナスなどを使って剥がしてみる。粘着性の接着剤で張り付いているだけなので比較的簡単にはがれる。剥がしてみると、カバーのアイコンが無い部分にもちゃんとランプが用意されているのが解かる。ここに新しいカバーを張ればよい。
ずれないように張ってみる。
裏側のカバーも同様に張る。これでBluetoothのアイコンが追加された。Bluetoothカードを装着してBluetoothをオンにするとここが緑色に光る。よしよし。
Bluetoothカードのインストール
ではいよいよ本体をちょっとだけ分解してBluetoothカードを取り付けてみる。最初に裏返して、キーボードを固定しているネジを外す。全部で4つだが、横にキーボードマークが描いてあるので解かりやすい。さすがthinkpad。気配りが行き届いている。メンテナンスされることを前提に作られている。
表にひっくり返して、キーボードを取り外す。キーボードをディスプレイ側にちょっと押して、手前のALTキーと無変換キーの間あたりのキーボードと筐体の協会あたりの部分にマイナスドライバーをかませて手この要領で浮かせるとパカッと外れる。キーボードを剥がしたら、オレンジ色のケーブルのさきの黒いコネクターを外して本体とキーボードを分離する。この写真の赤枠で囲ってある部分が、モデムモジュールだ。このモジュールをモデム&Bluetoothの機能をもったものに取り換える。
そして、Bluetoothのアンテナをディスプレイと本体とを接合しているヒンジの部分に格納するのだが、ヒンジを取り外すためには本体側の枠を取り外す必要があるので、もう一度裏返して枠を固定している7つのネジを外す。
ネジが外れたら、また表に返してカバーを外す。プラスチックで割とやわらかいので割ってしまわないようにやさしくソフトタッチで外す。隅まで丸見えだ!
ヒンジのネジを外して取り外す。
ヒンジを外した様子がこちら。細く伸びた詰めの部分が折れやすいので要チェックだ。実際折れた。
取り外したヒンジに、ebayで買ったthinkpad x31用Bluetoothアンテナを取り付ける。これはx31、x32用として売られていたが、x4シリーズようである。明らかに金属部分が長すぎて入らない。販売業者の説明によると、アンテナ部分を自力で折りたたんでヒンジに収めろ、とのことなので、おらないように折りたたむ。
ヒンジ部分に頑張って格納して、本体に取り付け、アンテナ線を配線し、Bluetoothモデムモジュールに結線した様子がこちら。
宙ぶらりんになっているBluetoothモデムモジュールをコネクターで本体にかっちりと接続し、ネジで留める。
本体カバーを戻して、
キーボードを戻して、
裏のネジを全部止めたら、完成だ!
Biosのアップデート
ThinkPadのBiosはハードウェアをチェックし、あらかじめ設定されたホワイトリストにない機器がインストールされたら起動しないようにできている。そのため、Wi-Fiモジュールなどもmini-PCIに接続されているため取り替えることができるが、取り替えるとホワイトリストにあるハードウェアでなければBiosにはじかれてエラーコード1802を表示して起動できなくなる。そのエラーを回避するBiosが出回っていたりする。これと同様にディスプレイ液晶パネルのSXGA+化もBiosによって阻まれており交換できない。これに対しても対処するためのmod Biosが出回っていたらしいが、作者が短期間で公開を停止してしまったため、その時にダウンロードできた一部の人を除いて今は入手不可能となってしまっている。持ってる人がいたらぜひ分けていただきたい。もしSXGA+化用のmod Biosが入手できたその時はSXGA+化してまたブログ記事にしたいと思う。
モデムモジュールも、Bluetooth付きのモジュールに交換すると1803エラーを吐いて起動できなくなってしまった。Thinkpad x31,32保守マニュアルには1803の対処は、ドーターカード(モデムモジュールがあったところに刺さるモジュールの事らしい)を取り外せと書いてあるのみだ。おそらく複数あるX31のグレードごとに細かくBiosがわかれており、Bluetooth搭載モデルのBiosにしかBluetoothモジュールを許可するようには設定されていないようだが、最新版の3.02(1QET97WW)が配布されているサイトに行ってみたらモデルごとにダウンロードするBiosがわかれている様子はなかった。モジュール交換時のBiosのバージョンは2.11(1QET73WW)でだったが、もしやと思いこれを3.02(1QET97WW)にバージョンアップすると、とくにMod Biosなどを使用しなくてもエラーを回避することができるようになった。
Diskette版をダウンロードした場合にはそれをフロッピーディスクにコピーしてフロッピーからブートし、nonDiskette版をダウンロードした場合には、リカバリー領域からリカバリーしたWindowsXP環境でそのまま実行すると自動的に再起動して、Biosのアップデートユーティリティーが起動してくる。”2.Update system program”を選択する。
ACアダプターが接続されてるか確認しろと言われるので、ACアダプターが接続されていることを確認してEnterキーを押す。
チャージされたバッテリーが取り付けられているか確認しろと言われるので、チャージされたバッテリーが取り付けられていることを確認して、Enterキーを押す。
アップデート中に電源を切ってはいけないと言う事と、正常終了したら自動で電源が落ちるが、もし電源がちなければシステムがダメージを受けている事だろう、という警告がでてそれでもやるかと聞いてくる。もちろんYESなのでYキーを押す。
アップデートが始まる。ここでも電源を落としてはいけないと言う事と、フロッピーを取り出してはいけないという注意が表示される。かかる時間は約1分らしい。正常終了すると、自動で電源が切れる。切れなければBiosのアップデートに失敗しており、専門の業者に頼んで復旧してもらうなどしなけらばならない。今回はそんな事態にはならず、電源が落ちてくれた。よかった。
電源を投入してbiosのバージョンを確認すると、3.02になっており、ちゃんと起動することができた。USBに繋いだメディアからブートするとき、ドライブの指定の仕方が2.11の場合と少し変わっていたが、そのほかどこが変わったのか詳しくは付属のreadmeをご参照願いたい。
Bluetoothの動作チェック
OSに入ってみて、Bluetoothが動くがどうか確認してみた。まず、リカバリーしたWindowsXP環境でFnキーとF5キーを同時押しすると、wi-fiとbluetoothのオンオフを切り替えることができた。Bluetoothランプの点灯も確認できた。しかしWindowsXPはサポートが切れており、運用することはできないので、LinuxmintをインストールしてBluemanをインストールし、Bluetoothの有効、無効を切り替えてみたところ、これもうまくいった。
これでBluetoothの周辺機器が使えるようになったので外出先でケーブルがこんがらがることが無くスマートに作業ができるだろう。スタバで開いてもマッキントッシュに引けを取らないはずだ!最新版のBios3.02でも約10年前の日付のものだ。そんなノートPCが現役で運用できるというだけでもなんだかアンティークっぽくていい。買ったそばから値崩れしていくパソコンや家電の中で、古いのに長く使われる骨董品のような機体があってもいいではないか。ebayをのぞくとシステムボードなどの部品もまだ潤沢にあるようだし、パーツを入れ替えつつセキュリティーチップと戦いながら修理できなくなるその時までX31を愛でて行こうと思う。
2 件のコメント!
BlackBerryQ10の情報を探してこちらにたどり着きましたが、思いもよらずX31のネタで嬉しく拝読しました。
我が家にも一台、X31が眠っています。3年前までメインで使っていました。
お出かけ端末は良いアイデアですね。
X31はなんかいいですよね。どこがいいのかと言われると難しいですが、なんか愛着が湧きます。
しかし、残念ながら今回組み込んだモジュールはBluetooth1.2で、BlackberryQ10はBluetooth4.0なのでBluetoothテザリングは使えませんでした。ペアリングに失敗してしまいます。ふるいBluetooth機器しか扱えないかもしれません。
BlackberryQ10とlinuxを入れたThinkpad x31をつないでネットする場合は、BlackberryQ10をモバイルポイントにしてWi-Fiでつなぐのがよさそうです。ぜひ、眠れるX31をお外に連れ出してあげてください!