Replicator2Xの故障
幾たびの故障を乗り越えてかろうじて実働状態を保っている満身創痍のReplicator2X君だが、実は今年の10月にY軸の移動がグラグラになって長らく危篤状態となっていた。どのような状態になっていたのかというと、以下の動画のとおりである。片手でパネルを操作しつつ、片手で撮影しているのであんまりうまく取れていないが状況はご覧いただけるかと思う。 右側が動力につながっていて、左側が引っ張られて動く仕組みになっているのだが、左側がついてこずに遅れてしまい、2本のロッドでつながれたキャリアが菱型にひしゃげてしまって動作がつっかえつっかえになっている。
分解と原因の特定
なぜこのような状況に陥ってしまっているのか。左右のロッドを固定する樹脂部品に劣化に原因があると思われた。なのでキャリア部分を外して分解してみる。まずは、いつものごとくヘッド部分の配線の外せるコネクターを全部外してしまう。その際、左右のエクストルーダーのどちらにつながっていたものか、テープなどを巻き付けてメモをしておくと組み立ての時に楽だ。うちでは写真の通り、右側用の配線には赤いテープを巻き付けて”R”、左側には灰色のテープを巻いて”L”と印をつけている。その後、エクストルーダーを固定しているブロックと、冷却ファンとヒートシンクを外してしまう。

次に、右側のキャリアに取り付けられているエンドストップスイッチの配線を外す。

同じく、右側のキャリアについているモーターのケーブルも外す。

子の外された2本のケーブルを抑え込んでいる謎の銀色の棒も外す。

続いて、挟まれているタイミングベルトを外す。

左側のタイミングベルトも外す。

続いて、いよいよY軸を支えている金属ロッドを外すのだが、これは下側に切れ込みのある樹脂パーツで挟み込まれているだけなので力ずくで下へ力をかけて外す。

この写真は下から見上げた様子だが、ロッドの先にケーブルがあったりするので力を入れて下に押し下げた時に勢いで引っ掛けてしまわないようにあらかじめよけてテープなどで固定しておくと安全だ。

旨く行けばXY軸のキャリアがごっそり外れる。書き忘れたが、作業前には前後左右のパネルは外して置いた。外装をはがされ、キャリアを外されたReplicator2Xは何ともさみしげだ。分解されたパーツを観察してみたら、左側のY軸の短いロッドを支えている真鍮製のリングの固定がグラグラになっていることが分かった。そのために右側に力がかかっても左側に伝わるのが遅れてひしゃげてしまっていたのだった。
代替パーツの入手と試行錯誤

純正の真鍮製のリングをはめ込んでもよかったが、せっかくなので内径8mm、長さ17mmボール式のリニアブッシュをモノタロウで入手して交換してみた。ついでにX軸キャリアをかねてから購入していたが重くなることを理由に使用を躊躇していたアルミニウム製のものにしてみた。

これにも、先ほどの17mmのリニアブッシュを入れて使用した。
純正の樹脂製のX軸キャリアはタイミングベルトを挟んで固定する方式だったが、本体が金属製となるとネジが使用できるのでタイミングベルトは金属部品をネジで締め付けて固定する方式になっている。

分解した手順を逆にたどって組み立てる。

動作テストしてみたら、やはりごくわずかに左側の動作が遅れている事に気が付いた。やはり右側のリニアブッシュの固定が少し甘いのが確認できた。ごくわずかだが遊びがあったのだ。
さらなる代替部品への交換
そうなると、重くなるのは覚悟のうえで、アルミ製の部品に取り換えるしか残された道は無い。やはりアルミ製のキャリアもaliexpressで入手できた。樹脂製の部品と並べてみるとかなりゴツい。

続いて左側。

さらに、X軸のロッドを床にコロコロ転がしてみたところ、スムーズに転がらず引っかかりがあることが分かった。長年の酷使でたわんでしまっていたのだ。エクストルーダーが詰まった時とか、部品を交換するときとか、上からかなりの押し付けたりしたこともあったような気がする。これを機会に、ロッドの交換も行う。

X軸は直径8mm、長さ424mmのロッドが純正だが、424mmという微妙な長さで売っているロッドを発見できなかった。幸いにも左右をアルミ製の部品に変えたことでロッドがキャリアを貫通する仕組みになっているので、今回はX軸用には450mmのロッドを使用することにした。Y軸のロッドは長さ300mmだが、間違って302mmのロッドを注文してしまっていた。これは致命的なミスだった。Y軸のロッドを受けている樹脂パーツはちょうど300mmのところに壁があるので、302mmのロッドは入らないのだ。Y軸のロッドは転がしてもX軸の時のような引っ掛かりは無かったので、今回は交換せずに純正のロッドをそのまま継続使用することにした。 まずY軸を通して、

続いてX軸も通してどーん。

金属になったのでエンドストプスイッチの基盤がショートするんじゃないかと心配になったので、下に絶縁テープを貼ったうえで、ねじで固定した。

これでY軸の移動ぐらぐら問題が解決し、見事復活したのであった!
ついでに熱電対の交換
せっかく分解しているので、この際ついでに、熱電対も交換してしまおう。本体をひっくり返してMightyBoardの端っこにあるコネクタを真ナスドライバでくるくる回して外す。フェライトコアもパカットあける。

そして、みんな大好き秋月さんから購入したこのおばあちゃんちのこたつの配線っぽい熱電対を新たに取り付ける。

しかしこのままでは取り付けられないので、黄色い方パカッと割る。

先端の圧着端子も気合で外す。細い方がプラスで太い方がマイナスだ。先ほどのMightyBoardの端っこの端子に付けて見る。

電源を入れてちゃんと温度が取れてるか見てみる。

だめだ!温度が取れていない!コネクションを確認しろと怒られた。プラスとマイナスを間違えたのだ!端子のプラスとマイナスを反対にしてつけてみると、

ちゃんと取れた!
テストプリントを兼ねて、部品の改良
テストプリントがてら、このまえ作ったエクストルーダー周りのパーツを改良してみた。チューブを止めている接手をねじ込んで固定しているが、やっぱり樹脂に金属のネジをねじ込んで固定するというのは強度に問題があり繰り返し外したりするのには不安がある。これをブラインドナットを使って改良してみる。

右が現行、左が改良版である。ブラインドナットを通すようにしたバージョン。さらに、ホットエンド側も同様の変更を加えてみる。

これでフィラメントの取り外しが楽になる。継ぎ手の蒼い部分を押してチューブを取り外すのも、繰り返し行っていればチューブに爪の跡が残りいずれ外れなくなる。チューブと接手はつなぎっぱなしで、ねじの部分をくるくる回して外す仕組みとなったことでチューブの傷を気にせず取り外しができるようになった。うれしい。
これで、Y軸のグラグラが治り、X軸のロッドが新しくなって、軸受けがリニアブッシュになったことで移動がスムーズになった。さらに熱電対が新しくなったので若干寿命が延びたはず。そしてチューブの継ぎ手の取り外しもらくらくになってウハウハとなった。いずれはMightyBoardも32bitボードに取り換えてしまいたいけれど、それはまた別のお話。