さらなる美しい写真を求めて
先日、NIKON1 J5を入手してからと言うもの、色々なものを写真に撮った。それはそれは綺麗な写真が撮れるのだが、今一つこのNikon1 J5の性能を引き出し切れていないのではないかという思いが常にある。もっといい写真を撮るにはどうすればいいか。2つのアプローチがあると思う。一つは、露出やシャッタースピード等のカメラ設定値を使いこなすと言うアプローチである。今まで使っていたコンデジに比べてNikon1 J5はいじれる設定項目が大幅に増えてややこしくなっているが、それはそのぶん自由度が上がっていると言う事だ。せっかく自由に設定できるのだからそれを被写体や状況によって最適化できるようになれば、思い通りの写真が撮れるようになるのではないだろうか。だが状況とカメラの特性を理解して設定を適切に行っていくと言う技能は、今日明日でいきなりでいるようなことでもない気がする。少しずつ積み上げて習得していく類のスキルだろう。
もう一つのアプローチとは、被写体を綺麗にとれる状態にセッティングするというアプローチだ。レフ板を使ったり、撮影ボックスを用いて被写体に充てる光をコントロールしてきれいな画像を得ようという試みだ。これも本当に最適な状態を作り出そうと思えばちゃんとした知識が必要になるであろうことは想像に難くない。しかしそこまで極めずとも、撮影ボックスのようなものを使うだけでも即効性があるのではないか。そこで撮影ボックスをAmazonで検索してみた。
いや、だが待て、これなら自分で作れるのではないだろうか。幸い、手元にはamazonで送られてきたり、や引っ越しの折に使用したダンボールがたくさんある。これの内側を白くして、照明を当てれば白が光を反射して柔らかな明るい環境が作り出せるのではないだろうか。それは市販されている撮影ボックスと同等の効果をもたらすに違いない。市販のボックスはカッコいい照明がついているものもあるが、レビューを見る限り照明の評判はあまりよくないみたいだ。さらに背景となるシートが別売りだったり、色の選択肢があまりなかったり、そのあたりの不安も自作ならカバーできる。照明は好きなものを設置すればいいし、背景も自作なら自分で好きな色をより取り見取りにできるではないか。材料をそろえて、のっぽさんになった気分で工作してみよう。
撮影ボックスの作成
まず、本体にamazonのダンボールをつかう。大きさはこんなもんでいいだろう。
側面の一辺を切って開き、底の部分も切り取る。
この状態で白い布を張って組み立てると、布が薄すぎてダンボールの茶色が透けて見えるため、スケッチブックの画用紙を張ってみる。そのうえで、白い布を巻いてみるととても白くなる。実際、白い!
この辺から、なんか小学生の工作みたいだなあと思い、我に返る。だが負けてはいけない。完成させて、実際小学生たちの夏休みの工作にしてはどうかと提案するくらいの気概が必要なのだ。めげずに白い布で巻いて、パンツのゴムに使う布ゴムを用いて張力を掛ける。
完成図がこちら。パンツのゴムで両側から引っ張って真ん中でクリップを使って止めている。LED電球をボックスの壁面にあてて乱反射させることにより、ぼんやりとした柔らかな光で、明るくかつ影のできない照明が実現されている。すごい!
撮影ボックスを使った写真の撮影
背景となる布は、大塚屋ネットショップでチノクロスのよさげな色をチョイスして使ってみた。内張りに使った白い布も同様だ。使ってみた印象としては、ちょっと薄いかもしれない。購入後折りたたまれて包装されていたのをアイロンがけしても織り目が消えない。しわくちゃにしておいておくとすぐ皺がついてしまうので扱いに注意が必要だ。予算に余裕があるならば、もう一つ厚手のT/Cツイルを使った方がいいかもしれない。
どれほどの威力があるのか、まずは茶色のバックで高級感を演出した場合、何気ないクリップがどう映るのかご覧いただこう。
なかなか高級感あふれる感じの取れているのではないだろうか。これが500円もしない布とアマゾンのダンボールによる演出だとはお釈迦様でも思うめぇ。といった出来であろう。
では、次に赤の背景で本当に高級なものを取ってみよう。純銀の1ozコインである。エクスペンシブ!
どこの貴族のテーブルの上かと思うほどの高級感だ。光沢をもった布のしわしわが醸し出す空気は、カンカンに詰めて売れば値がつきそうな気すらしてくる。写真に写ったこの美しい物体が欲しくて仕方ない。そんな気にさせる。
続いて、万能スタンド立てる君に手作り手まりキーホルダーを飾ってみた。
エクセレントッ!同じく万能スタンド立てる君の、スタンドバージョンで机の上の文房具を立ててみた様子だ!
赤い空間の非日常性と、文房具と言う日常性のアンビバレントなアトモスフィアがミックスしてマーベラスではないか。
さらに、Raspberry Piケースを入れてみた。
流石に紫のポップなカラーには無理があっただろうか。ついでにカメラモジュールケースの黄色をメインにしてみる。
これも流石に背景の赤に対してABSの黄色が軽すぎる感じがする。しかしやはり皺をたくさん画面に入れら幾分高級感が増し、有閑マダムのアンニュイな午後と言った風情が出る。
グリーンバックで遊んでみる
ハリウッド映画などで背景と人物を別々に撮影してクロマキー合成する場合、ブルーやグリーンの背景で撮影している様子を映画のメイキングなどで目にする機会があるだろう。今回はせっかく背景色が自由に選べるのだ。グリーンバックのまねごとをしてみようじゃないか。こうやって緑の背景で撮影していると、なんだか映画スタジオのミニチュアみたいでカッコいいじゃないか。
クロマキー合成は、動画と動画を合成して行う。もっと夏が深まった季節ならば、カブトムシなどを歩かせて街中の動画と合成しても面白かったかもしれないが、今回は手元にちょうど良い動く被写体が用意できなかった。なので静止画を合成してみる。こちらのRaspgerry Piの写真をGIMPを使って合成してみよう。
GIMPで画像を開いたら、ファジー選択機能を使って緑色の部分を一気に選択する。
ファジー選択の閾値を調整して、一気に消える値を探りながら作業を行うと、影があんまりできずに色むらが少なければ一気に選択できてしまうはずだ。
割ときれいに選択出来たら、緑の部分は削除してしまう。
そして背景となる画像を用意する。今回は芽を出して成長しつつある朝顔を背景とする。
合体!!!!!!!!
まるで最初からそこに置かれていたかのような自然さでRaspberry Piが佇んでいる。実に自然な光景だ。誰が何と言おうと自然なのである。自然の中のテクノロジー。オープンソースのソフトを使って物の5分の作業でこれができてしまうのだから、テクノロジーの進歩は恐ろしい。今回は手抜きで静止画だったが、動画でクロマキー合成を行うにもフリーソフトがいろいろある。その場合も考え方は大体同じだ。緑色を一気に消せる閾値を探って、背景動画と合成する。大きな布を買って試してみると面白い動画が作れるかもしれない。
撮影ボックスの大いなる威力
写真家の修業は物撮りにはじまり物撮りに終わると聞く。撮影ボックスがあっても思い通りにとれたとは言えないかもしれない。でも無かったころに比べると格段に綺麗な写真が撮れるようになった。ボックス内で乱反射した柔らかい光で明るくなったことにより、Nikon1 J5が自動で調節しやすい環境が整っているように思う。何も考えずにカメラに任せてもきれいにとってくれる。Nikon1 J5はとても賢いのである。自作撮影ボックスはダンボール製なので見た目は悪いがその効果は絶大であったと言わざるを得ない。市販の撮影ボックスの背景色は灰色だとか、黒とか白などのごくありふれた色しかないが、安い布で色々な色を試してみると面白い。しわしわを作って高級感を出すのもちょっとリッチな感じが出てよい。元が段ボールなので壊れてもすぐに直せるだろう。次はもっとおっきなボックスを作ってみようかと思案中である。写真は楽しい。まだまだ興味は尽きない。